● 15年12月10日 県議会報告

2015年12月10日 12月定例会 山口律子議員一般質問・答弁(大要)「環太平洋連携協定に対する本県の対応について」「生活保護基準の見直しに関する取組について」



≪2015年12月定例会・本会議一般質問≫

2015年12月10日

 

山口律子議員

 日本共産党の山口律子です。
 まず、環太平洋連携協定に関する本県の対応についてお尋ねします。政府は、大筋合意を受けたTPP関連政策大綱を決めました。今年度の補正予算や来年度予算編成に反映させるものの、具体的な対策は来年秋までに詰めるという方針です。秘密交渉で大幅に譲歩した大筋合意の全容を公開せず、政府が情報を独占したまま対策を打ち出すなどというのは本末転倒です。TPPは十二カ国の交渉が大筋合意したといっても、まだ協定の全文すら確定せず、各国の署名や批准の見通しもはっきりしません。我が国が大きな被害を受ける農業分野について、国会決議は米など重要五項目について関税の撤廃や引き下げを認めず、それができなければ交渉脱退も辞さないと明記しましたが、それがどう担保されたのかも不明です。これらの検証を抜きにTPPの影響は限定的だと宣伝されても信用できません。
 JA福岡中央会は、本議会に提出した要請書において、農業の現場では、将来への不安と農産物の重要品目の聖域確保を求めた国会決議が守られておらず裏切りだと、厳しい批判の声を上げました。知事は生産者の怒りを、どう受けとめておられるのでしょうか。少なくとも大筋合意の全ての分野の情報公開を行い、本県農業や経済に与える影響の試算など、速やかな情報提供を政府に求めるべきだと考えます。あわせて北海道など多くの都道府県が実施、あるいは実施を検討している独自の影響調査や試算を本県も行うべきと考えますが、知事の見解を伺います。
次に、子供の貧困対策について伺います。連日のように報道されている子供の貧困ですが、福岡県の就学援助率は二二・六二%と全国五番目に高く、子供の貧困が最も深刻な県の一つだという指摘があります。県は、福祉、教育、労働、住宅など多分野にまたがる子供の貧困に特化したワンストップ窓口として、複数の相談所を設置する構想を持っていると報道されましたが、歓迎すべき決断です。本県は、現状をどう捉え、どんな対策を講じようとされているのか、知事の見解をお聞かせください。
 子供の貧困対策を考えるとき、即効性のある施策は学校教育法第十九条、就学援助制度の充実です。昨年一月施行の子供の貧困対策の推進に関する法律、八月の子供の貧困対策に関する大綱でも就学援助の活用、充実が強調されています。
 そこで三点、教育長に伺います。第一は、文科省がことし十月六日に各都道府県教育長に発した通知の受けとめです。通知は、援助の必要な児童生徒の保護者に対し漏れなく就学援助が実施されるようさらに取り組みを充実していただく必要があると、市町村教育委員会に対する指導、援助の強化を強く要請しています。政府は大綱で、就学援助制度の周知状況を公表していますが、本県の直近の状況と今後の取り組みを伺います。
 第二は、生活保護基準の見直しに関する取り組みです。政府は平成二十五年八月から三年連続して保護基準を切り下げましたが、ほかの制度にできる限り影響が及ばないようにすることを基本的考えとしています。本県も就学援助基準は生活保護の一・何倍の市町村が大半ですが、平成二十五年度から就学援助率が下がっています。文科省通知を市町村に単に送付するだけでなく、就学援助の活用充実を図るという大綱の立場で周知徹底を強めるべきと考えますが、御所見を伺います。
 第三は、準要保護の就学援助の費目拡大についてです。準要保護の就学援助は要保護に準じるとしていますが、本県の場合、平成二十二年度から要保護児童生徒に支給されているPTA会費、クラブ会費、生徒会費を支給している市町村は七自治体しかありません。準要保護の就学援助の支給費目については、少なくとも要保護児童生徒に準じて支給されるよう地方交付税で財源措置がされています。県教委は市町村に対し、費目拡大を働きかけていただきたく、教育長に伺います。
 次に、住宅リフォーム助成制度についてです。知事は、本県の景気は緩やかな回復傾向にあると説明されましたが、福岡県景気動向一致指数は二八・六%と三カ月連続で五〇%を下回り、低い水準が続いています。安定的な景気回復には個人消費の活性化策が必要であり、住宅リフォーム助成制度は最も効果的な施策の一つと考えます。現在、県内過半数の三十一市町が独自に実施し、経済効果は十五倍から三十倍に達します。市町村を応援し、その波及効果をさらに上げるため、秋田県、佐賀県などに続いて本県も制度創設を決断するときではないでしょうか。知事にお尋ねします。
 国土交通省によれば、昨年の県内個人建築の工事予定額は三千百十七億円に達し、リフォーム額は推計で千三百六十億円でした。県民の六割が今の家に住み続けたい、改善などの要望が三三%です。助成制度が創設されれば、老朽化した住宅のリフォームが進み、空き家をふやさない対策にもなります。建築業に従事する若者の激減が社会問題になっていますが、新制度の創設は、仕事と賃金をふやし、これからの福岡の建築を担う技術者を育てることにもつながります。高齢者や家族の安心、健康増進など、社会福祉の観点からのメリットも少なくありません。こうしたさまざまな角度から、住宅リフォーム助成の有効性に関する総合調査を実施し、その結果を速やかに公表し、制度設計に踏み出すべき時期に来ていると考えますが、知事の御意見をお伺いし、質問を終わります。

小川 洋知事

 お答えを申し上げます。
 まず初めに、TPPの大筋合意の情報公開と影響調査についてでございます。今回のTPP協定の大筋合意によりまして、我が国は世界全体のGDPの四割近くを占める経済圏へ参加することができるようになる、その一方で、農林水産業につきましては、一部影響が懸念されているところでございます。こうしたことから、県におきましては、国に対し、大筋合意された内容について、農林水産業に与える影響への懸念も踏まえ、国民の皆様方に十分丁寧な説明を行うようこれまで累次要請をしてきているところであります。交渉結果を踏まえた影響の試算につきましては、国が年内を目途にその試算を公表することといたしておりまして、その結果を踏まえ、県としてどのような対応が必要か検討してまいります。
 次に、子供の貧困対策でございます。本県の子供の貧困の現状でございますが、生活保護、就学援助の受給率を勘案をいたしますと、本県の貧困状態に置かれているお子さんの割合は全国数値を上回る状況にあるのではないかと考えております。このため県では、今年度中に、子どもの貧困対策推進計画を策定をいたしまして、教育、生活、保護者の就労、経済的支援などさまざまな関連分野の施策の充実を図るとともに、お子さんの成長段階から家庭環境に応じた効果的な支援を行うため、県内数カ所にワンストップの相談窓口を設置をいたしますことについても検討を進めているところであります。こうした取り組みを通じまして、関係部局一体となって子供の貧困の改善を図ってまいります。
 次に、住宅リフォーム助成の有効性に関する総合調査、そして助成制度の創設についてお尋ねがございました。住宅のリフォームは、内容も非常に広範で多岐にわたります。また、個人の財産として、所有者がみずからの考えで行うことがその基本であるというふうに考えております。このため、リフォーム一般に関する助成制度の創設というのは困難であると、このように考えております。しかしながら、県といたしましては、耐震改修の促進、既存住宅の流通市場の環境整備と、そういった観点から戸建て住宅の所有者に対する耐震改修費の補助や、既存住宅購入者に対するリノベーションの補助を実施しているところであります。また、県が助成を行っております地域商品券の発行事業におきましても、幾つかの商工会では、発行する地域商品券の一部を住宅リフォーム等に特化する商品券を発行されるなど、工夫が行われているところであります。国におきましても、既存住宅の長寿命化と質の向上に資するリフォームの先進的な取り組みを支援する長期優良住宅化リフォーム推進事業を、平成二十五年度から実施しているところであります。
 今後も、このような取り組みを県民の皆様方に広く周知をしていきますとともに、リフォーム相談会、中小工務店を対象とした講習会を実施することによりまして、リフォーム市場の活性化を図り、空き家対策や建築技術者の育成につなげてまいります。このようなことから、リフォーム助成に関する調査を行うことは考えておりません。

 

城戸秀明教育長

 就学援助制度の周知状況についてでございます。本県において、平成二十六年度に就学援助制度の書類を入学時に学校で配付している市町村の割合は六〇・七%、毎年度の進級時に配付している市町村の割合は五七・四%にとどまっております。県教育委員会といたしましては、市町村に対し、入学時や進級時に全ての児童生徒に申請書類を配付するほか、できるだけ多くの広報手段を通じて就学援助の周知徹底を図るよう指導を行っておりまして、取り組みが十分でない市町村に対しましては、さらなる指導を行ってまいりたいと考えております。
 生活保護基準の見直しに関する取り組みについてでございます。就学援助のうち、要保護児童生徒に対する援助について、国は生活保護基準の見直しに伴う影響ができる限り生じないよう対応するとしています。県教育委員会といたしましては、市町村に対し、準要保護児童生徒に対する援助についても、国の方針を理解した上で適切に御判断いただくよう要請してきたところでございまして、引き続きその周知徹底に取り組んでまいります。
 就学援助の支給費目の拡大についてでございます。就学援助は、学校教育法で市町村に実施が義務づけられているものであり、準要保護児童生徒に対する就学援助でどのような費目を支給対象とするかは、それぞれの市町村が実態に応じて判断することとなっております。そのため、県教育委員会として支給費目について市町村に指導を行うということは困難でございますが、市町村が必要な就学援助を行えるよう、国に対して財政措置の充実を要望してまいりたいと考えております。

山口律子議員

 住宅は個人の財産だからリフォームの調査や助成はしないとの答弁でした。ところが国は、既存の統計調査では実態の把握はできないと建築物リフォーム・リニューアル調査を行い、調査の必要性を繰り返し指摘しています。国は来年の税制改正大綱で三世代同居のための改修に減税や、佐賀県は佐賀に住んで福岡に通勤すれば一万円のJR特急代支給、新潟県は移住したら奨学金と引っ越し代支給などのニュースが報じられています。本県も積極的で斬新な政策を打ち出し、市町村の施策を後押しして元気福岡にしていくべきではありませんか。住宅リフォーム助成制度の実施を再度要望し、質問を終わります。

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