● 16年06月16日 県議会報告
2016年6月15日 6月定例会 高瀬菜穂子議員一般質問・答弁(大要)「必要性も採算性もない「下関北九州道路計画」は、中止の決断を」 「正規と同様に働く常勤講師が正規と同様に産休が取得できるよう制度の適切な運用を」
2016年6月16日 6月定例会・高瀬菜穂子議員一般質問(大要)
必要性も採算性もない「下関北九州道路計画」は、中止の決断を
日本共産党の高瀬菜穂子です。通告に従い、一般質問を行います。
まず、下関北九州道路についてです。知事は、先の2月議会で、下関北九州道路(以下下北道路)を「必要不可欠」な道路であるとする一方、通行需要予測は、2030年時点で1日あたり約6万6千台と見込んでいることを明らかにされました。これは、2014年の1日7万台という実績から4千台も減っています。需要が減るのに、新しい道路が必要でしょうか。一度、「無駄な公共事業」と批判され調査自体が凍結となった本計画を、今復活させようとしていますが、需要予測が減少する中での、巨大プロジェクトに県民の理解は得られないのではありませんか。知事の見解を伺います。あわせて、2月議会で東九州自動車道開通により、交流が増大することが予測されると答弁されましたが、実際に交通量は増えたのか、お答えください。
知事は、下北道路の必要性の根拠に「災害時の対応」を挙げておられます。しかし、「下北道路」予定地の彦島・日明間のすぐそばには小倉東断層が走っています。地震調査研究推進本部は、小倉東断層の地震時の「ずれ」は2メートル程度と想定。2012年の本県地域防災計画でも、それまでのM6.5から6.9に見直され、人的被害や建物被害の想定が修正されました。巨大地震の発生が懸念されている中で、活断層のすぐそばに「災害対策」の名で道路を作るというのは、あまりにも危険ではありませんか。知事の見解を伺います。
次に、県作成のパンフレットに書かれている内容について、2点伺います。第1は、「下関北九州間の所要時間が短くなる」という点です。関門トンネルを通った場合に50分かかるが、下北道路の整備で25分に短縮されるというものです。私は、先日、下関市役所から道路予定地近くまで車で走りましたが、彦島までで20分かかりました。日明から北九州市役所まではさらに10分以上かかります。どのように走れば、25分に短縮されるのか、ご説明ください。
第2は、住民、企業アンケートです。このパンフに示されているアンケートは、道路利用料が「無料の場合」で回答を求め、「移動と輸送の機会が増える」と「期待の声」を載せていますが、利用料は無料になるのですか、お答えください。常識的には無料になることはないと考えます。実態に即さないアンケートを行い、都合のよい結果を住民の声として載せるのは不適当ではありませんか、見解を伺います。
下北道路計画は、緊急の必要性も採算性も見込めないものであり、中止することを強く求め、次の質問に移ります。
【小川知事答弁】
下関北九州道路に対する県民の理解について
県の予測では、関門海峡を通過する一日あたりの自動車交通量は、人口減少の影響もあり、平成42年時点で約6万6千台と、26年度の約7万台から、若干減少すると見込んでおります。
しかしながら関門海峡は、①北部九州と山口県には、フランス・イギリスに匹敵する自動車産業が集積していること、②わずか2㎞の海峡を挟んで市街地が集積していること、③両都市間の通勤通学の在来が一日1万人を超え、海峡を越えた生活圏が形成されていること、など密接につながっており、こうした交流・連携を支え、本州と九州を結ぶ関門橋・関門トンネルの大動脈としての役割については、今後とも、いささかも変わりはないと認識しております。
しかし、この2つのルートは、昭和33年に関門トンネルが、昭和48年に関門橋がそれぞれ開通しております。補修工事や台風・大雪などの悪天候、交通事故により通行止めが頻繁に発生しており、ネットワークとして脆弱であるため、3本目のルートとして下関北九州道路が必要不可欠であると考えております。
もちろん、公共事業については、客観性、透明性の確保が大切でございます。費用対効果を含め総合的な観点から評価することが重要であると認識しております。
このため国に対して、必要な調査を実施し、総合的な評価をしていただくよう、2県2市の首長や地元経済団体で連携し、働きかけておるところでございます。
活断層の近くに災害対策として道路をつくることについて
小倉東断層に関しては、平成25年2月に、国が「小倉東断層の長期評価」を公表してございます。
これによりますと、小倉東断層は、小倉北区から小倉南区にかけて分布しており、小倉北区の北側については、下関市付近まで連続する可能性があるとされております。
これについては、下関北九州道路の事業化に向けて、ルート、構造等に関する詳細な調査・検討が進められる段階で、活断層の存在の可能性、それによる影響、対応策について、十分な検討を行われると考えております。
【山本県土整備部長答弁】
東九州道開通後の関門橋・関門トンネルの交通量について
両施設を管理するネクスコ西日本に確認したところ、「速報値として、開通直後4月25日の一日当たり交通量は、関門橋が約3万3千500台、関門トンネルが約2万8千300台となっており、昨年4月27日の一日あたり交通量が、関門橋が約3万3千900台、関門トンネルが約2万9千800台であることから、大きな変動は見られない」と聞いております。
開通直後の交通量については、熊本地震による九州自動車道や大分自動車道の通行止めなどの影響も考えられることから、今後の推移を見守ってまいります。
下関北九州道路の整備による時間短縮について
下関北九州道路の整備による所要時間の算出にあたっては、下関市彦島から北九州市小倉北区のルートで整備されたと仮定し、下関市役所から北九州市役所までを移動する距離を走行速度で除することにより、想定される所要時間を算出しております。
走行速度については、道路計画の検討において、広く一般的に採用されている道路交通センサスによる実勢の走行速度を基に設定してあります。
こうして、下関北九州道路の利用により、下関市役所から北九州市役所までの想定される所要時間を算出した結果、約25分となっているものでございます。
住民、企業アンケートについて
下関北九州道路については、今後事業化にむけて、ルート、構造、事業費、さらには議員ご指摘の有料、無料といった事業手法を含めて、さらなる詳細な検討が必要でございます。
このことから、技術的知見を有している国に対して、そうした具体的な調査を行うよう、要望しているところでございます。
現段階においては、無料の場合、有料の場合の両方のケースについて、幅広く住民や企業の利用意向を把握することが必要であることから、2県2市で実施した住民・企業アンケートにおいては、無料児だけでなく、有料時についても調査を実施しております。
調査の結果、住民・企業の意向では、無料の道路としての整備を望む声が大きかったことを踏まえ、無料の場合を平成27年度のパンフレットに記載したところであります。
<第2質問>
下北道路についてです。事故による通行制限などで関門トンネルの渋滞が頻発しているとの答弁がありました。しかし、ネクスコ西日本によれば、過去5年間の通行止めの大半は工事によるもので、工事を除く通行止めは405時間、1日わずか12分弱で、落下物などが大半です。補修工事などの際には、事前に通知し、関門橋を利用するので支障はないとのことです。また、関門トンネルは硬い岩盤の中にあり、トンネル本体は無筋コンクリート製で鉄筋が入っていないため、水分や塩分などによる劣化の影響はないとのことです。強度調査でも基準を大きく上回り健全で、トンネルは地盤とともに動くので地震の影響も少ないということでした。安全性に問題はなく、海外では100年以上のものもあるそうです。一方、下北道路は、活断層のそばに道路をつくるというもので、こんな危険で無謀なことはないということを、改めて指摘しておきます。
- 利用料について質問です。住民が無料を望むのは当然でしょうが、関門トンネルが57年を経て有料なのに、新しい道路が無料になることがありうるのでしょうか。それはどんな場合でしょうか。お答えください。
【山本県土整備部長答弁】
再質問 下関北九州道路が無料になる場合について
道路は、国や地方自治体が公的資金をもって建設し、無料で共用することが原則でありますが、道路整備に緊急性がある場合に、採算の範囲内で借入金で建設費をまかない、供用後の料金収入で建設費を回収する有料道路制度が認められております。
下関北九州道路については、現段階においては、ルート・構造が未定であり、有料、無料については、今後の調査によりそれらの検討が進み、概算の建設費が明らかになった段階において、有料道路としての採算性、関連する道路との交通量の分担のあり方などを勘案した上で、検討が行われることになると考えます。
<第3質問>
これから調査を含めて国に要望するのだ、詳細は分からないといいながら、パンフレットには、無料を前提にした住民アンケートの結果を載せ、机上で計算した時間短縮を宣伝し、一方、減少する需要予測については書かない。「建設先にありき」ではありませんか。これで、客観性、透明性の確保はできているとはいえません。
このプロジェクトは、調査が中止になる前の試算では1500億を超える巨大なものでした。運営主体はどこで、どのような費用負担になるのか、費用対効果はどうか、重大な問題です。本州と四国を結ぶ3ルートは、通行料では建設費の借金を返せず、周辺自治体は大きな財政負担を強いられてきました。
本計画は、緊急の必要性も採算性もありません。中止の決断を改めて強く求め、質問を終わります。
正規と同様に働く常勤講師が正規と同様に産休が取得できるよう制度の適切な運用を
次に、学校現場で働く臨時教職員、特に正規と同様に働く常勤講師の産休制度について伺います。
先の予算特別委員会において、マタニティハラスメント対策の強化を求めた際、高橋福祉労働部長は、「県を上げて取り組む」と力強く答弁をされました。働く女性が妊娠・出産・育児をきっかけに 職場で精神的・肉体的な嫌がらせを受けたり、解雇や 雇い止め、自主退職の強要などの不当な扱いを受ける「マタハラ」は許しがたい人権侵害です。
ところが、県が管轄する学校現場で働く臨時教職員に対して、妊娠・出産を理由とした雇い止め、自主退職の強要が実際に起こっています。教員不足が深刻な本県において、講師数は約5000人、当然妊娠される講師がおられます。その際に、「正規と同等の代替がこないからやめてほしい」「育児に専念してはどうか」などといわれ、自主退職においこまれたり、6ヶ月更新のさいに更新されなかったりしています。制度上は、正規と同様に保障されるべき産休が保障されていません。昨年、北九州で勇気をもって産休を取った常勤講師は、産前期間にはいっても代替が来ないため結局出勤し、自宅で成績処理もし、ドクターストップがかかりました。それでも非常勤の代替しか配置されていません。なぜ、速やかに常勤講師が配置されないのでしょうか。産休取得ができない事態は、明らかな労働基準法違反であり、「女性の活躍」にも男女共同参画にも逆行します。本来、教師の妊娠・出産は、命の大切さを伝えられるかけがえのない機会です。それなのに、現在の事態は「妊娠したら退職」という負の認識を子どもたちに植え付けてしまうのではありませんか。多くの自治体で、常勤講師の産休は正規と同様に十分に保障しています。
そこで、教育長にお尋ねします。
本県における常勤講師の産休にかかわる制度は、どのようになっていますか、改めてお示しください。昨年1年間で産休を取得した常勤講師は何人ですか、小・中・高・特別支援学校別に、明らかにしてください。実際の運用で、雇い止めや事実上の解雇となっている現状があると指摘しましたが、これについて教育長の見解を伺います。正規と同様に働く常勤講師が正規と同様に産休が取得できるよう制度の適切な運用を求め、質問を終わります。
【城戸教育長答弁】
本県における常勤講師の産休制度とその取得状況について
常勤講師の産前・産後休暇については、福岡県職員の勤務時間、休暇等に関する条例に基づき、正規職員と同様の制度となっております。
また、昨年度のその取得状況については、小学校で2人、中学校で4人、県立高校で1人、特別支援学校は0人となっております。
妊娠・出産を理由とした解雇や雇い止めについて
常勤講師は、正規職員と同様の休暇制度があるなか、妊娠・出産を理由として辞職を強要することは、あってはならないと考えております。
このため、任用する際は、講師本人に対して休暇制度に係る休暇一覧表を配布しているところであり、今後も引き続き、常勤講師の休暇制度について周知してまいります。