● 18年03月16日 県議会報告
2018年3月16日 2018年予算特別委員会・高瀬菜穂子委員質疑・答弁「本県の産業廃棄物行政について」
≪2018年予算特別委員会≫
2018年3月16日
本県の産業廃棄物行政について
高瀬菜穂子 委員
日本共産党の高瀬菜穂子です。本県の産業廃棄物処理行政について伺います。
本県の廃棄物行政は、筑紫野市の産業廃棄物処分場「産興」の死亡事故をはじめとして、事故や代執行を繰り返してきました。その上、昨年5月28日、嘉麻市の中間処理業者「エコテック」が、保管の法定上限をはるかに超えた過積みによる廃棄物火災を引き起こしました。エコテックは事業廃止届けを提出したとのことですが、廃棄物行政の抜本的な転換と強化を求める立場から、「エコテック火災」を検証し、以下質問いたします。
今回の質問に際して、エコテックにかかわる行政文書や帳簿、許可申請書などを情報公開でいただきました。「エコテック」に対して県は、改善命令、履行催告、厳重注意など、度重なる指導を行っており、その記録もかなり詳細です。それを見ますと、あのような火災を起こす前に、何度も搬入停止や許可を取り消すなどの処分を行うタイミングがあったと考えるわけです。
まず、初めての「改善命令」ですが、2012年(平成24年)5月22日に出されています。命令しても改善されないため、何度も指導や立入り検査をされています。改善命令の最初の期限である11月22日時点で改善が見られないため、翌2013年(平成25年)2月28日まで履行期限の延長を行っていますね。その際、「再延長は不可。未履行となった場合は事業の停止命令または許可の取り消しを行う」と通告をしておられます。
ところが、期限がきて処理がすすんでいないのに、県は、許可の取り消しはせず、逆に12月まで期限を再々延長します。改善命令に違反した場合は、廃掃法では「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金を科せられ、又はこれらを併科される」となっていますが、県はそうした厳しい措置はとらず、許可の取り消しも行わず、その結果、2015年に小火(火災)、小火といってもですね、3月31日と1週間後の4月6日にも火を出していますから、地元の方は「火事」だといわれています。この小火を出し、さらに昨年の大火災につながっているわけです。
そこで質問です。最初の改善命令の履行が出来なかった時点で、許可の取り消しなどの処分を行うべきだったのではないかということなんです。なぜ、許可の取り消しを行わなかったのですか。その対応は間違っていたのではありませんか。お答え下さい。
坂井義博 監視指導課長
今回の事案につきましては、県は、平成24年5月に過剰保管是正のため改善命令を発出いたしました。
これに伴い、廃棄物の搬出を開始しましたが、過剰保管の改善には至らなかったことから、平成26年5月には、廃棄物の新たな搬入を停止する命令の手続きを開始いたしました。
これに対しまして、事業者からは、廃棄物の受入れの大幅な抑制を内容とした誓約書が提出され、搬入も減少しましたことから、その推移を見守っていたところでございます。
高瀬菜穂子 委員
私の質問にはお答えになっていませんよね。私は改善命令が履行できなかった2013年(平成25年)の時点でなんらかの処分をすべきではなかったか、と聞いたわけです。2012年(平成24年)に改善命令を発出し、改善には至らなかった。改善をしていないのに、2回も期限を延長している。そして、2回目の期限が迫った11月14日、エコテックを県庁に呼んで、改善命令の履行について催告をし、県は、「改善命令の発出から1年半経過し、期間も2度延長している。完了できなかった場合、さらなる行政処分を行う」といっているじゃありませんか。この時点で、既に深刻だったんですよ。このとき、エコテックの高山社長は「個人的に昨年から億単位の金を使っているので、手元にもう残っておらず、会社としても信用を失いつつある 云々。取り消し処分などを受けたとしても個人で改善は継続する」といっており、自ら取り消し処分を覚悟した発言をしたと記録があります。もう一度お聞きします。この時点、つまり改善命令が2回の期限延長を経てもなお履行できなかった時点で、適正に処分すべきだったのではないかということです。端的にお答えください。
坂井義博 監視指導課長
改善命令以降、廃棄物の搬出を開始いたしましたが、平成26年5月には廃棄物の新たな搬入を停止する命令の手続きを開始いたしました。
高瀬菜穂子 委員
答にならないですよね。平成24年に改善命令を出して、そして守られていない。平成26年まで何もしなかったということになりますよ。私は、県の監視指導が適正に行われていれば、2013年(平成25年)の時点で、火災は防げたというふうに考えます。
知事は、昨年の本会議で「平成26年5月、廃棄物の新たな搬入を停止する命令の手続きを開始したが、7月にエコテックより廃棄物の受け入れ大幅抑制を内容とした誓約書が出され、その直後には新たな搬入が停止したため、事業者による改善が見込まれるものと判断し、推移を見守ってきた」と答弁されました。今、課長のお答も同じ答えだったと思います。それでですね、
平成26年(2014年)パネル表示
これは、エコテックが県に提出した帳簿から作成をいたしました。搬入と搬出の量をグラフにしたものです。
平成26年(2014年)ですが、7月に誓約書を書いているんですよね。7月に、そして新たな搬入が停止したと。たしかに8月と9月は搬入が停止しています。しかし2ヶ月だけで、この時期、搬出もすすんでいません。それなのに10月には受け入れが始まっています。11月には233トンと7月を超える水準の受け入れを行っていて帳簿を見ましたら、記載された搬入記録に、7月の誓約書で「この業者からだけにします」と言っていたそれに違反する大量の搬入(混合廃棄物218.83トン)がありました。これらは約束違反ではないでしょうか。この11月の時点でも許可の取り消しなどの処分が可能だったと思うのですがいかがでしょうか。
坂井義博 監視指導課長
当該業者につきましては、平成26年7月に誓約書が出てきました。その後も改善が進みませんでした。そのことから県は指導を行い、事業者に廃プラスチックの破砕機の新規購入や選別機の補修など、処理能力を向上させております。
また、新たにセメント会社と契約を結ぶなど、搬出促進の努力が見られましたことから、その推移を見守っていたところでございます。
しかしながら、過剰保管の改善が進みませんことから、再び事業停止命令の発出を検討しつつ、昨年3月に事業者に開催させた住民説明会におきまして、事業者が具体的な計画を示し、本年度中の改善を約束いたしました。
この改善状況の履行確認及び指導を開始した矢先に昨年の火災に至ったものでございます。
高瀬菜穂子 委員
去年のことを聞いているのではなくて、この11月の時点でなんらかできたのでないかということをお尋ねしたんですよ。
先に行きます。聞いてないことにたくさん答えられるのですが、破砕機の新規購入や選別機の補修、セメント会社との契約とか言われましたけれどもそれはいつですか。
坂井義博 監視指導課長
平成27年から28年にかけてでございます。
高瀬菜穂子 委員
平成27年から28年にかけて、搬出の努力が見られたというのですが、27年と28年のグラフ、
平成27年分(2015年)パネル表示
これが27年ですね。赤が搬入、青が搬出です。28年は、
平成28年分(2016年)パネル表示
赤の方がずっと多いんじゃないでしょうかね。
これで処理能力を向上させていると言えるんでしょうか。どんどん搬入が増えている。どこ見て言っているのかなと思うんですよね。搬出促進の努力なんか見えません。
この時期の行政記録を見てもですね、例えば、平成27年(2015年)1月19日、県の立ち入り聴取で社長はこう言っていますよ。「資金がなく、会社の存続も厳しいため、トレーラー10便分の契約で搬入し始めた」「今後も資金繰りのために10便分ごとの契約で搬入する」つまり、資金がなくて、搬入するしかない状況だったわけでしょう。処理能力なんか、向上していませんよ。向上しているのは、搬入の意欲ですよ。
処理能力、向上していますか。いかがですか。
坂井義博 監視指導課長
搬出促進の努力は見受けられました。しかしながら過剰保管の改善が進みませんでした。そのことから再び改善命令の発出を検討して住民説明会を起こさせた次第でございます。
高瀬菜穂子 委員
ごみが減ってないどころか、どんどん増えているんですよ。これはエコテックの資料ですから。処理は進むどころか、ごみの山になったわけですよ。
どうしてこうなったかという点で一番の問題は、平成26年、最初ですけど、
2014年(平成26年)パネル表示
先ほど11月の時点で処理が出来るのでないか、処分出来るのでないかと言いましたが、この年の12月に廃棄物処分許可証の更新の時期を迎えます。エコテックは12月26日に5年に1回の許可証の有効期限を迎えて提出をするんですけど、このときの県の対応は全く理解できないんですよね。有効期限の前日、通常は2か月ぐらい前から持ってくるということですが、前日に持ってきた、それに対して申請を受け付けているんですけれども、どのようなチェックを行って受付印を押したのか、お答えください。
小磯真一 廃棄物対策課長
更新の申請につきましては、法に規定いたします「許可申請書」「貸借対照表」等を提出する必要がございます。
行政手続き法により、形式的に必要な書類が整っていれば申請書の受付・審査を行う必要がございます。
当該事業者からは、必要書類が提出されていたことから受付けたものでございます。
高瀬菜穂子 委員
形式的に書類がそろっていたら、改善命令に従っていない業者であっても、誓約書を守らなくても、県は、「不許可」とせずに申請を受け付けたということですよね。ここにコピーもあるんですけれども、一日ですべてチェックできたのか疑問です。
このエコテックが提出した更新申請の審査について伺います。私、この申請書一式見せていただいたんですが、びっくりしました。積み上げられた廃棄物が写っている写真が堂々と添付されており、明らかに保管基準が守られていません。第2に、この廃棄物を処理する組織・人員ですが、運転手が2人、作業員はたったの3人です。これでどうやって、あの大量の廃棄物を分別処理できるでしょうか。それに、これまでの指導で、事業を続ける経理的基礎がないこともわかっていたはずです。なぜ、不許可とせず、申請を受け付けて(審査を継続させ)、結果として事業が継続されることとなったのか、お答えください。
小磯真一 廃棄物対策課長
県は当該事業者に対しまして、改善命令を発出してその履行を強く指導していた状況でございました。またこの当該事業者は、改善を約束していましたことからその推移を見守り、処分を留保していたものでございます。
高瀬菜穂子 委員
推移はずいぶん見守ってきたのではなかったのですかね。この過積みで、人もいない、この申請内容で改善ができないことははっきりしているじゃないですか。重要なのは、この受付印を押すという行為ですけれども、押しますとそれが「みなし許可」として営業が続けられるということなんですね。エコテックは、この後火災を起こすまで2年半もの間、「みなし」で営業しました。どんどん搬入してごみの山にしたわけです。先ほどお示ししたとおりです。受付印を押した県の責任は重大です。廃掃法では、「申請内容が許可基準に適合していると認めるときに許可し、許可証を交付する」となっています。「みなし」であっても、事実上営業が出来るのですから「許可」と同じです。正式な許可証ではなく申請書に県の印があるだけ、その「みなし」で営業をしている業者には、悪質な排出事業者が単価をたたいて大量に搬入してくることがあると聞きます。エコテックの場合も、まさに「みなし」になった後、搬入量は急激にふえています。許可できないから「留保」したと県は言いますけれども、許可できないような業者が営業し続けるということではないでしょうか。一体いつまで留保するんですか、こうゆう場合は。
小磯真一 廃棄物対策課長
いわゆる「みなし許可」と申しますのは、廃棄物処理法の規定によりまして、更新申請の場合に審査を行い、許可あるいは不許可の処分がなされるまでは、従前の許可が有効期間の満了後も、その効力を有することを言います。
審査にあたりましては、事業者の廃棄物処理に係る指導や、申請書類の補正を指示することもございまして、審査に一定の期間を有する場合もございます。
なお当該事業者につきましては、欠格事項に該当いたしましたため、既に不許可の処分を行っております。
高瀬菜穂子 委員
不許可の処分を行ったのはいつですか。
小磯真一 廃棄物対策課長
平成30年2月5日付けで不許可をしております。
高瀬菜穂子 委員
平成30年っていうのはもう今年ですよね。もう事故のずっと後ですよね。
それでは、その「みなし」の状態が続くというのは何年でも続くんですか。この2年以上も。5年も可能性があるということですか。
小磯真一 廃棄物対策課長
廃棄物処理法に基づきますと、いわゆる審査の処分が終わるまでは従前の効力が有するということでございまして、それについて特に年限の規制はございません。
高瀬菜穂子 委員
驚きますよね。5年も「みなし」営業可能でしょうか。それだったら「許可」の意味はないじゃないですか。「みなし」を与えたことが結果的には搬入を増やしたということです。
これまで、県がエコテックに行ってきた指導というのは、不適正処理に対し「改善命令」を出してもそれを履行させることなく延長して、度重なる指導を行っているにもかかわらず、「みなし」という形で事実上許可を行い、しかも2年半もの間、その状態を継続させたということです。
これまでも、こうした甘い指導が、重大事故や行政代執行を招いてきたのではありませんか。改善命令が履行されなければ、罰金や措置命令、許可取り消しなど、法に定められた監視指導を厳格に行うべきではありませんか。ずるずるとした本県の廃棄物行政を抜本的に改めるべきだと考えますが、見解を伺います。
坂井義博 監視指導課長
産業廃棄物の不適正処理が生じた場合には、重点的に立ち入り検査を行いますとともに、事業者に対して、指導や厳重注意書の発出を行って、早急な改善を求める措置を採っております。
また県では全国で初めて、安定型処分場を対象に掘削調査を実施しますとともに、排出事業者から最終処分業者に至るまで、処理ルート全体を対象とした立入検査を行うなど、不適正処理の早期発見、早期対応に努めてまいっております。
さらに、来年度から立入検査におきまして、赤外線カメラを搭載したドローンを活用することとし、産業廃棄物の処理施設に対する監視指導の高度化を図ることとしております。
加えて、指導に従わない事業者に対しましては、生活環境の保全上の支障を生ずる事態を招くことを未然に防止し、廃棄物の適正処理を確保するために、法に則って、厳正に行政処分を行ってまいりたいと思います。
高瀬菜穂子 委員
適正な処理が行われているという認識のようですね。
環境省からですね、平成25年(2013年)に「行政処分の指針について」という通知が出されています。これには「違反行為を把握した場合には速やかに行政処分を行うこと」「処分業者が命令に従わない場合には命令違反として積極的に告発を行うこと」とあります。県が、なるべく当該業者に搬出させるという指導をおこなっていることは、一定理解できますが、行政処分の乱発をせよといっているのではないんですけれども、しかし、県の指導は、この環境省の通知からもあまりにも外れているのではないでしょうか。
こうした甘い監視行政の下で、新たな処理施設の建設や拡張を、住民の皆さんは大変危惧しておられます。筑紫野市のエコセンチュリー21、嘉麻市のエコジャパン、川崎町・添田町でも新たな処理場建設に地域住民から厳しい声が上がっています。最後に部長にお聞きしますが、廃棄物処理業者に対する許可や更新を厳格に行うとともに、抜本的な監視行政の転換と強化が必要だと考えますが、見解をお聞かせください。
関 好孝 環境部長
産業廃棄物の適正処理の確保は、県民のみなさんの生活環境保全する上で、極めて重要です。
このため、産業廃棄物処分業の許可にあたりましては、廃棄物処理法に基づき、厳正かつ慎重に審査を行い、適切に判断を行ってまいります。
また県は、345の中間処理業者の事業場及び30の最終処分場に対しまして、延べ2,000回を超える立入検査を毎年度実施しております。この立入検査につきましては先ほど課長も答弁いたしましたように、来年度から新たに赤外線カメラを搭載したドローンを活用しまして、監視指導の高度化を図る予定といたしております。
これによりまして監視・指導体制の一層の強化を図って参りたいと考えております。こうした取り組みを進めまして、不適正処理を見逃さない監視・指導体制を構築するとともに,その改善にあたっては、廃棄物処理法に基づくあらゆる手段を講じてまいります。
高瀬菜穂子 委員
「あらゆる手段を講じてまいります」とお答えがありましたけれども、今回の事故についてどのような検証・総括を行ったのか、どのような教訓を引き出したのか残念ながら伝わってこないという感じがいたします。真摯に見直して具体的な改善策を出して頂きたいというふうに思います。
私ども、県議団は、火災後すぐに、エコテックに行きましたが、悪臭がきつく長く立っておれないほどでした。体調不良を訴えた市民も多数でした。消化した後の真っ黒い水は、川に流れ込む際に泡をぶくぶく立てて気味悪く、水質検査では環境基準の何倍ものダイオキシンが検出されました。今後、排出責任者、排出事業者も責任も追及するとのことですが、まずはこれまでの県の監視行政について見直していただかなければなりません。今回、ドローンの予算がつきました。ドローンはしっかり活用していただきたいと思いますが、エコテックについて言えば、ドローンを使わなくても、目視で遠くから法違反が明瞭でした。重要なのは、県の姿勢です。
私は、エコテックの法違反とともに、県の監視行政こそ法違反ではないかと考えます。厳格な監視行政への転換について、知事に見解をお聞きしたく、知事保留をお願いします。