● 18年03月22日 県議会報告

2018年3月22日 2018年予算特別委員会・高瀬菜穂子委員質疑・答弁「教員の働き方改革と新学習指導要領実施等について」



≪2018 年予算特別委員会≫ 

2018 年3月22日

 

教員の働き方改革と、新学習指導要領実施等について

 

高瀬菜穂子 委員

 

 日本共産党の高瀬菜穂子です。通告に従い、「教員の働き方改革と、新学習指導要領実施等について」伺います。

 教員の働き方改革を進める上で、勤務時間を管理することは基本の基であり、私もタイムカードなどの導入を強く求めてきたところですが、新年度、全ての県立学校にICカードが導入されることは評価できると思っております。

 しかし、一方で、新学習指導要領移行にともなう小学校への英語科導入、道徳の教科化などは、さらに現場の多忙化を深刻にするものです。文科省は相反する施策を進めているといえる。日本教育新聞社が行った市区町村教育長に対するアンケートでは、働き方改革で、最も期待する施策として「定数改善」が第一に挙げられています。実に97%が望んでおり、第2、第3を大きく引き離しています。

 本県においても、教員不足が深刻であり、現在正規採用に取り組んでいるところではありますが、定数自体を増やすことについての見解をお伺いします。

 

平川真一 教職員課長

 

 教職員定数におきましては、国の平成30年度の予算において、学校における働き方改革や、複雑化・困難化する教育課題へ対応するため、教職員定数が1595人の改善が図られたところでございます。

 本県としましても、今後も引き続き必要な教職員定数の改善について国に要望してまいります。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 国に対しては働きかけているということですが、国は35人学級の法定化を小学校1年に据え置いたまま、小2は定数改善で行うという不安定な教員配置になっており、それ以上の学年については、地方裁量に任されています。それ以上の学年については地方裁量に任されています。国に対して、早期に35人学級を実現するとともに、特別支援教育、通級指導教室、専科教員の配置などに大幅な教員増を求めていただきたいと思います。同時に、県独自でも教員配置を考えるべき時にきていると思いますので、この点については要望をしておきます。

 

 次に、真の働き方改革を進める上では、教育内容そのものの検討も行うべきであると考えます。

 次に、真の働き方改革を進める上では、教育内容そのものの検討も行うべきであると考えます。まず、学力テストについてです。学力テストの弊害については、私、これまでも何度も指摘をしてきました。現場では、過去問を繰り返すなどの指導がされており、平均点競争でおいこまれ、教師も子どもも疲弊し、教育がゆがむとの指摘がされている。

 ここで、委員長、福井県議会が採択した意見書を資料として配布させていただきたいので、お取り計らいをお願いいたします。

 

 福井県議会は、昨年3月に池田中学校で起きた中二男子の自殺事件を受け、「福井県の教育行政の根本的見直しを求める意見書」を採択しております。資料にありますように「学力日本一を維持することが本県全域において教育現場に無言のプレッシャーを与え、教員、生徒双方のストレスの要因となっていると考えられる」と指摘し、「過度の学力偏重は避けること」などを求めています。この意見書は、自民党の議長さんが中心になって、議会だけでなく、広く教育現場の意見も聞いてまとめられたとのことですが、私、大変感心しました。

 学力トップレベルと誇ってきた福井県から、学力テストが教員・生徒双方のストレスの要因になっていると分析が行われています。同様のことは、全国でも本県でも起こっていると考えるわけです。 学力テスト体制を見直すべき時にきているのではないか、福井県の意見書を見られての県の見解を伺います。

 

田中直喜 義務教育科長

 

 学校の教育活動は、学力、体力、豊かな心、の三つをバランスよく育成しまして、生きる力を育むことを目指して進められるべきものでございます。

 このなかで、県や国の学力調査は、児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、学校における教育指導の改善や検証改善サイクルの確立に重要な役割を担っております。学力テストにつきましては、市町村や学校、広く県民のみな様のご理解を得ながら進めていいるものであります。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 進められているということですけども、学力テストの見直しは、福井県だけではありません。元筑波大学長から茨城県美浦村の教育長となり、専門の教育社会学を生かした教育行政を行った異色の門脇厚司氏も、「学力向上路線から離脱し、授業王国を目指す」として、学力テストの平均点などにこだわらず、先生方に「楽しい授業をやってほしい。先生自身が授業を楽しんでほしい」と奨励されました。学力テスト体制で先生が萎縮していると警鐘を鳴らしています。現在はつくば市の教育長に就任され、ここでも学力テスト体制からの離脱を宣言されています。

 

 このような中、広島、静岡、岐阜などで、国の学力テストに加え、県、それから市町村でもテストが行われ、その予備テスト、その準備だとかに追われています。県独自の学力テストについて、休止するなどの動きもあります。本県でも、テスト漬けの現実があり、県独自のテストについては見直してはどうかと考えますが、見解をお聞かせください。

 

田中直喜 義務教育科長

 

 学力の向上につきましては、学校教育の重要な目的の一つではございますが、働き方改革が進められるなかで、教員や児童生徒の負担にも配慮しながら、進められるべきものと考えております。この観点から、本県におきましても、県独自の学力調査について実施教科や対象学年の見直しも行ってきたところでございます。今後とも学校現場の意見や実態等を踏まえ、適切な学力向上方策を研究してまいりたいと考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 現場の意見や実態を踏まえるとのご答弁ですね。大変、重要だと思います。ぜひ、意見をしっかり取りまとめていただきたいと思います。

 次に、この4月から小学校で導入となる英語の教科化についてお伺いします。小学校教師の多くが英語の免許を持たない中で、現在の中一の内容、最も基礎となる学習を小学校に降ろそうとしていると聞いておりますが、中途半端な小学校英語は、かえって英語嫌いの子どもをつくるとの専門家の指摘もあります。

 マスコミ等の影響で「早くから英語に親しめば、自然と話せるようになる」と思っている人も多いですが、外国語として英語を身に着けることはそれほど容易ではなく、母語とは違い、外国語の場合は、その言葉のルールを理解しなければ身につかない」との専門家の指摘は重要だと思います。こうした指摘を県としてはどう受け止めますか。

 

田中直喜 義務教育科長

 

 今後進められる小学校の英語教育は、単に中学校教育の前倒しではなく、まずは音声に慣れ親しみ、積極的にコミュニケーションを図ろうとする意欲や態度を育成したうえで、段階的に「読む」・「書く」を加え、教科としての指導を充実させるというものでございます。

 さらに中学校においては、こうした小学校教育を基礎として、英語の四技能をバランスよく育み、日常生活で活用することのよさや喜びを感じさせることに留意して指導を進めることになっております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 四技能を伸ばすということは、なにも目新しいことではなくて、ずっと言われてきました。不十分な部分があれば補っていく、改善していくのは当然ですけれども、小学校への導入は、その解決策とはならないと思うわけです。英語の低年齢化が、子どもにとって大きな効果があったという研究は、とりたててはありません。

 日本児童英語教育学会は、中学で追いつかれる程度であるとの研究結果も発表しています。加えて塾通いが増え、子どもの自由な遊び時間が奪われる、塾通いが増えることで格差が拡大する、小学校教員の負担が大きすぎるとの指摘も行っております。効果がはっきりしないのに、教員の免許もないまま、唐突に英語の教科化を行うというのは、どうなんでしょうか。

 

 韓国では1997年に英語が小学校3年生から教科化されましたが、この時、小学校教員全員に120時間の基礎研修を実施しています。それと比べでも、今回の国のやり方はあまりにも乱暴だと考えます。現場の声をしっかり踏まえ、準備が不十分であれば、国に対し本格導入の見直しを求めるべきだと考えます。県の見解を伺います。

 

田中直喜 義務教育科長

 

 昨年3月に学習指導要領が既に告示されておりまして、小学校における新たな英語教育につきましては、平成32年度から実施が決定されております。

 県としましては、小学校の英語教育に関する研究指定校の成果を踏まえまして、カリキュラム編成の手引きや、CAN-DOリストのモデル案などを作成し、学校の授業づくりを支援してまいります。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 支援して行くということではありますけれども、既に導入している韓国の研究では、ヨンヒョンジュン氏の研究結果では、小学校英語導入で、「リスニング・スピーキングでは中1で効果があったが、学年があがるとあまり変わらなくなった」先ほどの研究とあまり変わらないんですね。「できる子できない子の両極化が起こった」「塾・予備校に行く子どもが増えた」と指摘されております。

 準備不足のままの小学校英語導入は問題が大きいと思います。現場の声をしっかり聞いていただいて、分析をして、必要であれば国に意見を言うと、そういう立場に立っていただきたいと要望しておきます。

 

 最後に、道徳の教科化についてです。

 道徳の教科化と評価については、現場で不安が大きくなっているところです。学問としての系統性のない「道徳」を教科とし、「心の評価」につながる評価を行うことに、わが党は反対してきました。しかも、記述式評価を導入することは多大の時間と労力を現場教師に課すものとなります。指導や評価はどのように行おうとしているのか、伺います。

 

田中直喜 義務教育科長

 

 道徳科の授業では、特定の価値観を押し付けたり、言われるままに行動するよう指導するものではございません。多様な価値観を認め、道徳としての問題を考え続ける姿勢に重きを置くものでございます。

 また、評価につきましては、「一面的な見方から多面的な見方へと発展しているか」「道徳的価値の理解を自分との関わりで深めているか」といった点に着目し、他者との比較ではなく、個人の成長を認め励ます観点から行うものでございます。

 県としましては、評価のあり方も含めた道徳の指導資料を小中全学校に配布することとしており、よりよい授業づくりを支援するとともに、教員の負担軽減も図ってまいります。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 今のお答えで、特定の価値観を児童生徒に押し付けるものではないと、言われるままに行動するよう指導するものではなく、多様な価値観を認め問題を考え続ける姿勢に重きを置くというようなことで、多面的な観点をもって行うということで、ぜひそのようにしていただきたいと思うわけです。

 しかしながら、今回、検定を通って採択をされている教科書を見ますと、特定の価値観を押し付けるものになるのではないかという教材も見られます。例えば、私が非常に違和感を持ったのは、「カボチャの弦」という教材ですが、全ての教科書に載っています。カボチャの弦が、どんどん大きくなって伸びていくんですが、「そっちに伸びちゃいけないよ」と注意されるんだけど、どんどん伸びていく。最後にトラックに轢かれて痛い目に遭って、「我がままを言っちゃいけません」というようなことが徳目になっているんです。カボチャの弦って、もともと伸びていくのが当たり前だし、いいことなのに、トラックに轢かれて痛い目に遭ってしまう。カボチャの弦を比喩に使って、「自己抑制の押し付けにならないか」と心配になるような教材も入っています。他にも、「これは適当か」というようなものが、教科書自体にも散見されます。こういった教材を忠実にこなしていくのではなく、その時その時の状況や、あるいは子どもたちの課題にあわせて教材・授業をつくっていくことを、ぜひ保障していただきたいと思います。

 例えば、今であれば平昌オリンピックの感想を言い合うとか、感動した本を発表しあうこと、そういったことが道徳について、他者について考える素材になるという風に思うわけです。そうした裁量については、もちろん現場にあると考えていいと確認できるでしょうか。

 

田中直喜 義務教育科長

 

 新たに特別な強化となります道徳の授業では、国の検定を受けた教科書を主に使用することが原則でございますが、その上で、道徳科の指導の効果をより高めるため、市町村教育委員会の承認のもと、地域や児童生徒の実態等に応じて、有益適切な補助教材を活用することが大切であると考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 いま、私が言いましたような、その時々の感想を言い合ったりするような自由な授業は、これは保障されると考えてよろしいですか。

 

田中直喜 義務教育科長

 

 規定がありますのは、教科書または補助教材ですので、教員の道徳観に基づいて授業をされることは、適切であろうかと考えます。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 そういったことを大切にしながらの授業にしていっていただきたいと思います。

 今回、働き方改革が進められる一方で、教員の大きな負担となっている学力テスト、更にこれから導入される英語や道徳の教科について、取り上げさせていただきました。

 いずれにしても、現場の状況、現場の率直な意見をしっかり受け止めて、集約をしていただく、そして過重な負担を招かないようにしていただきたいと思っています。必要に応じて国にも意見を言っていただくことを、再度お願いしまして、私の質問を終わらせていただきます。

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