● 18年10月02日 県議会報告

2018年10 月2日 2018年決算特別委員会 高瀬菜穂子委員質疑・答弁「最低賃金について」 (大要)



<2018年決算特別委員会>

      2018年10月2日

 

最低賃金について(大要)

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

日本共産党の高瀬菜穂子です。最低賃金について伺います。まず、最低賃金が決定される過程と最低賃金算出の根拠について、簡潔にご説明ください。

 

田上喜之 労働政策課長

 

最低賃金については、まず国が設置する中央最低賃金審議会におきまして、賃金の実態調査結果など各種統計資料を十分に参考にしながら、公労使三者の協議によって、引き上げ幅の目安が示されます。

その後、国が示した引き上げ幅を参考に、都道府県労働局長が設置する地方最低賃金審議会で、公労使三者による地域の実情を踏まえた審議・答申を得た後、異議申出に関する手続きを経て、都道府県労働局長により決定されております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

福岡県はその中で、Cランクに位置づけられており、今年の改定で814円となりました。全国の最高は東京で985円、最低は鹿児島の761円で、時給にして224円の差となっており、3割近い格差が生じています。そして、その差は毎年拡大しているわけです。県はこれまで、最低賃金の引き上げを国に要求してきたと思いますが、現在の水準についてはどのように評価しておられますか。また、福岡県がCランクであること、全国にこれだけの格差があり、さらに差が広がっていることについて、どのような見解をお持ちでしょうか。

 

田上喜之 労働政策課長

 

最低賃金制度におきまして、毎年の引き上げ幅を決める目安制度のランク付けについては、公労使からなる中央最低賃金審議会において、1人当たりの県民所得、消費、給与、企業経営の状況に関する19の客観的指標を基に、各都道府県の経済実態を総合的に勘案して設定されております。そして、おおむね5年ごとに公労使それぞれの立場からの議論がなされた上で、指標のあり方やランク区分の見直しが行われてきているところでございます。

本県は、1人当たりのGDPが全国21位であること、消費者物価指数や所定内給与額、製造業の付加価値額が他県に比べ低いことなどにより、総合指数が全国24位となっております。

総合指数が17位までがBランクに位置づけられていることを鑑みますと、本県がCランクに位置づけられていることは、現行制度の結果としては、やむを得ないものと考えております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

19の指標のひとつ、一人当たり県民所得で福岡県は31位と先日報道がありました。これが最賃に反映し、そのため県民所得が上がらない、そして最賃が上がらない、こういう相関があると思います。19の客観的指標と言いますが、その総合で本県は24位とのことですが、47都道府県に差をつけ順番に並べ、17位までをBランクにする、というようなやり方が本当に生活実態を反映した妥当なものなのでしょうか。

全国労働者総連合、全労連が25歳単身者が人間らしく暮らすのに必要な最低生計費の調査を「マーケットバスケット方式」でおこなっています。その結果は、全国どこでも月額23万円前後で大きな差はなかったということです。住居費が高い都会は交通費などの負担は少なく、逆に地方では住居費は安いが車がないと仕事に就くことが難しく、燃料費も含め負担が生じるなど、全体として大きな差はないということです。月額23万円以上を確保するには、やはり最低賃金は時給1000円以上必要となる。全労連は、時給1000円以上1500円をめざすとしています。政府も全国加重平均で1000円以上を目標にすると打ち出しました。本県としても、最低賃金1000円以上を求めるべきではないかと考えますが、県の見解を伺います。

 

田上喜之 労働政策課長

 

本県では、これまでも、国に対して、地域別最低賃金の改定に当たっては、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金格差の是正や、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことが出来るよう、800円を超える最低賃金を実現することを要望してまいりました。

本年度の最低賃金引き上げによって、本県の最低賃金は814円となり、当初の目標は達成した。今後については、本年の要望の中で賃金の上昇、消費の拡大、企業収益の向上という日本経済の好循環を継続していくため、国として適切かつ着実な最低賃金引き上げを継続することを求めているところでございます。

 

高瀬菜穂子 委員

 

本県が最低賃金800円をめざしてきたのは、最低賃金が生活保護基準を下回る逆転現象があってはならないということから、 800円以上という目標を持っていたと認識しています。今後については「国におまかせ」というのでなく、必要な生活費はどのくらいかを調査し、その確保のためには最低賃金はどのくらいであるべきかという検討をすべきではないでしょうか。根拠を持って県として最低賃金引き上げを要求していただきたいと思います。政府も加重平均で1000円といっているのですから、本県としても新たな目標を持つべきだと考えます。この点については要望しておきます。

 

さて、最低賃金が地域ごとに決められ、全国で差があることの影響は、人口の流れにも影響していると考えられます。

これは、(パネルを示し)住民基本台帳の人工移動報告と2017年の地域別最低賃金との相関です。人口の流れと最低賃金の相関を示したものです。全国加重平均は848円です。これを越えているのは7府県のみです。

人口の流れには、様々な要因はあると思いますが、最低賃金との相関が首都圏や九州、東北などで見て取れるのではないでしょうか。県としては、どのように考えますか。

 

田上喜之 労働政策課長

 

 ご指摘がありました人口の流出入の要因につきましては、それぞれの地域の経済状況、住宅事情、交通事情など、さまざまな要因が複雑に関係するものと考えている。最低賃金のみで人口の流出入が決まるものとは考えておりません。

 

高瀬菜穂子 委員

 

最低賃金のみでは決まらないと思います。もちろん、人口の流出入には様々な要因があることは言うまでもありません。しかし、同じ仕事であっても賃金に差がある場合、人口流出入に影響があることは明らかだと思います。

先ほど香原委員から、保育士の賃金の地域格差について指摘があったところですけれども、例えば、義務制教職員が昨年度より政令市に移管されました。同時に全県一律にしていた地域手当に差が生じました。福岡市は10%、北九州市は3%、その他の圏域が4.6%です。今、教職員の働き方改革が叫ばれているように、教師の仕事はどこでも大変ですが、それだけに採用試験を受ける際のインセンティブとして賃金格差は大きく働くのではないでしょうか。北九州では「これだけ地域手当が違えば、教師の確保が難しくなる」と不安の声が上がっています。

同様に、同じ仕事をしていても、例えばコンビニで仕事をしたとして、川を挟んだ隣の県で賃金が違うとか、長距離トラックの運転手が同様に長距離を走っても働く場所で賃金が違う。そうなると、人口の流出入にも影響を与えると考えます。

私は、地域手当やランクなどの格差を見直していくべきだと思います。世界の主要国では賃金格差を設けておらず、日本のように47都道府県で細かく差をつけている国はありません。世界から見れば、小さな島国でこれだけの格差は、異常ともいえます。このことについて、福井県の西川県知事は「日本においても地域間の賃金格差をなくし、全国一律にすべき」と発言をしておられます。全国一律の最低賃金にすることについて、県の見解を伺います。

 

田上喜之 労働政策課長

 

地域間の賃金格差の解消につきましては、ランクごとに最低賃金の引き上げ額を定めている現行方式では、上位県と下位県との金額の差は常に拡大することになります。

こうしたことから全国知事会として、本年8月に国に対し「地域間格差の拡大につながっているランク制度を廃止し、全国一律の最低賃金制度を実現。最低賃金の引き上げ、これによって影響を受ける中小・小規模事業者への支援の強化」を行うよう提言したところでございます。

 

高瀬菜穂子 委員

 

全国知事会としてランク制の廃止と、全国一律の最低賃金制度の実現に向け、提言を行ったことは、私たちがかねてから要求してきたことと方向を同じくするもので、大変心強いことです。知事会が全国一律最低賃金を提言したのは今年初めてだということです。ぜひ、知事会の提言が実現するよう県としても強力に取り組んでいただきたいと思います。

次に、最低賃金を引き上げる場合に必要な中小企業・小規模事業者への特別な支援について伺います。全国知事会の提言にも、「中小・小規模事業者への支援の強化」が盛り込まれていました。 中小・小規模事業者への抜本的な支援強化なしに、最低賃金の大幅引き上げはあり得ません。現在、最低賃金を引き上げるための中小企業施策にはどのようなものがありますか。また、その活用件数、実績についてお答えください。

 

田上喜之 労働政策課長

 

 最低賃金の引き上げにあたりまして、国におきまして、その事業所内で最低賃金を一定額以上引き上げまして、かつ、設備投資を行った企業に対し、その費用の一部助成を行う業務改善助成金というものが用意されております。

 この助成金の県内の実績でございますが、福岡労働局に確認しましたところ、平成29年度に57件ということでございました。

 

高瀬菜穂子 委員

 

現在のところ、「業務改善助成金」制度が唯一の中小企業支援だということで、本県の2017年度実績はわずかに57件だということでした。山形県は、同制度で中小企業などが賃金を一定額以上引き上げた場合、国の助成に県が独自に上乗せする奨励金を導入したということです。本県としても、上乗せを行うなど独自の施策が必要ではないでしょうか。お答えください。

また、この制度では、賃金引上げと設備投資を同時に行う必要があり、しかも助成額が50万円から100万円と少額であります。これでは十分とは到底言えないと思います。最低賃金引き上げのための中小企業支援の抜本拡充を行うべきではないかと考えますが、県の見解を伺います。

 

田上喜之 労働政策課長

 

 最低賃金引き上げによる影響を最も大きく受けるのは中小企業であります。このため、中小企業に対する支援については、最低賃金の制度を所管している国において、しっかりと実施していくべきものと考えております。

県としては、最低賃金引上げの要望の際、「企業収益を強化し、更なる賃上げや投資

が拡大する経済の好循環を地方の中小企業に行きわたらせ、さらに拡大・進化させるための対策を講じること。特に経営基盤の弱い中小企業に対して、経営力の強化や経営の安定化を進めるために、生産性の向上や取引条件の改善を図るなど、総合的な支援・諸施策を強力に実施すること」を合わせて国に要望しているところでございます。

 

高瀬菜穂子 委員

 

県としての独自施策は考えていないが、国に対し強力に要望するとのご答弁だったと思います。国としての施策はあまりに乏しく、中小企業支援を強力に要望してきたいと思います。

諸外国では、日本とは比較にならないほど中小企業支援を充実させています。フランスでは、社会保険料の事業主負担軽減に2003年から3年間で2兆2800億円。韓国では30人未満の中小企業、約300万人に対し、過去5年間の平均引き上げ率7.4%を上回る人件費に対し直接支援、これに9800億円。アメリカでは07年から5年間で8800億円の中小企業向け減税を行っています。

ところが日本の中小企業への支援執行額は13年からの3年間でわずかに87億円と極めて少ないのが現状です。国の中小企業支援予算を抜本的に増やし、特に中小企業の最低賃金引き上げを可能とするよう求めるものです。

最低賃金は、すべての働く人に人間らしい生活を保障する水準であるべきです。また、

賃金格差が地方格差になるのでは、地方創生に逆行します。中小企業を支援し、全国一律最低賃金1000円以上を求めることについて、最後に部長の答弁を求めます。

 

神代暁宏 福祉労働部長

 

最低賃金の引き上げにつきましては、国では、全国加重平均ではありますけれど1000円を目指すという目標を掲げているところでございます。

本県としましては、賃金の上昇、消費の拡大、企業収益の向上という日本経済の好循環を継続していくため、適切かつ着実な最低賃金の引きあげを国に対し、今年も要望をしましたし、これからもそういう考えのもと、国に対し継続し要望してまいります。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 しっかり取り組んでいただきたいと思います。

 全国加重平均で1000円を目指すと国が言っているわけですが、先ほどお示ししたように、現在848円ですね。ほとんどの県はこれ以下です。全国が1000円になったとしても、本県は1000円とはならず、これより低いわけです。ですから独自目標をもって、国に対し中小企業支援と共に賃金引上げという要求をしっかりしていただきたいと思います。

 このことを重ねて要望しまして、質問を終わります。

 

以上

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