● 19年10月03日 県議会報告
2019年10月3日 2019年決算特別委員会 高瀬菜穂子委員質疑・答弁 「DV問題について」(大要)
<2019年決算特別委員会>
2019年10月3日
DV問題について(大要)
高瀬菜穂子 委員
日本共産党の高瀬菜穂子でございます。DV問題について伺います。2001年(平成13年)に「DV防止法」が制定されて18年となりました。内閣府によれば、2002年度の相談は全国で35,943件でしたが、昨年2018年度は、114,481件と過去最高になっており、5年連続で10万件を超えて高止まりです。警察への相談は、2002年には全国で14,140件でしたが、昨年2018年は77,482件と実に5倍以上に増えています。痛ましい児童虐待の背後にDVが関係していることも指摘されています。内閣府男女共同参画局が2018年に発表した「男女間における暴力に関する調査報告書」によると、「女性の約3人に1人、男性の5人に1人は配偶者からの被害を受けたことがあり、女性の約7人に1人は何度も受けている」「被害を受けたことがある家庭の約2割は子どもへの被害も見られる」「被害を受けたことのある人の約9人に1人は命の危険を感じた経験がある」とのことです。DV対策の強化は急務であると考えます。そこでまず、本県における相談件数の推移とその特徴、これまでどのようなDV対策を行ってきたのか、お尋ねします。
間野小代美 男女共同参画推進課長
本県におけるDV相談件数でございますが、配偶者暴力相談支援センターでの相談は平成14年度の590件から、平成30年度は2,423件となっております。警察での相談は平成14年の417件から平成30年は2,276件となっており、法施行当初に比べ、大きく増加しています。
配偶者暴力相談支援センターと警察での相談件数全体を見ますと、平成21年までは大きく増加しており、その後は毎年4,700件前後で推移しております。
これまでの対策でございますが、県では、平成14年度に女性相談所において休日・夜間の電話相談を開始するとともに、平成18年度には保健福祉環境事務所に配偶者暴力相談支援センターを設置いたしました。身近な地域で相談を受ける体制を整備しております。
さらに、平成27年度からは男性やLGBTのDV被害者からの相談対応を行うなど、相談体制の充実を図ってきております。
高瀬菜穂子 委員
この間、県としても相談体制を充実されてきたと一定の評価をするものです。私は、法が制定された翌年2002年の決算特別委員会で、「DV対策の強化」を求め、質問をいたしました。当時大きなニュースになったのですが、私の教え子のお姉さんが、離婚成立直前に、夫に待ち伏せされ、車の中で斬殺されました。5歳だった娘は、そのとき母親の死を認識できず、葬儀の際に「どうして動かないの」と懸命に話しかけていました。母親を父親から殺されるという最悪の「面前DV」を受けた子どものその後の苦悩は、察するに余りあります。本年4月、児童福祉法が改正となり、児童虐待の早期発見等の項に、学校、児童福祉施設、病院に加え、「都道府県警察、婦人相談所、教育委員会、配偶者暴力相談支援センター」を新たに明記し、「児童虐待の早期発見に努めなければならない」とされました。これを受けて、これまで以上の連携が求められると考えます。現在および今後の取り組みについて、お尋ねします。
間野小代美 男女共同参画推進課長
配偶者暴力相談支援センターでは、日頃から市町村や児童相談所、警察等の関係機関と連携しまして、DV被害者や同伴児童への相談支援を行っております。
DV相談において、子どもへの虐待が疑われる場合は、これらの関係機関と連携して、子どもの安全を確認するとともに、特に急に、緊急に安全を確保する必要がある場合は、女性相談所等においてDV被害者と子どもを一緒に保護しているところでございます。
今後も、関係機関と緊密な連携に努めてまいります。
高瀬菜穂子 委員
何度も同じ話を各機関でしなくてもいいように「共通シート」を使って、情報を共有しているという自治体の報告などがありますけれども、本県ではどのような形で情報共有を行っているんでしょうか。
間野小代美 男女共同参画推進課長
本県においては、関係機関共通のシートというのはございませんけれども、それぞれの相談窓口では調査票を作成しておりまして、被害者からの聞き取りにより把握した内容を関係機関で共有することにより、被害者が何度も同じ話をしなくて済むように取り組んでいるところでございます。
高瀬菜穂子 委員
県警にお聞きしましたところ、殺人事件に占めるDV関連の事例は毎年のようにありまして、昨年は43件の殺人事件のうち実に9件がDV関連であったということです。重大な事件に発展する可能性があることを認識し、関係機関の連携を一層強めていただくようお願いします。
さて、厚生労働省が、「婦人相談所」の機能を強化するため、根拠法を売春防止法から新法に改める検討を始めたと報じられました。性暴力やDV、アダルトビデオへの出演強要などによる女性の被害にも、より十分な対応ができるようにすることをめざし、来年の通常国会にも法案を提出する予定ということです。現在の婦人相談所は、支援対象とする女性を更生すべき存在としており、これでは様々な課題に対応できないと厚労省の有識者検討会でも意見が出された通りです。DV対策で、まず重要なのは相談窓口をとにかく増やすことと情報の発信、そして自立支援だと思います。私も体験しましたが、深刻な事態であるにも関わらず、そこから逃れる決断ができない人もいらっしゃいいます。自立して生活できる自信や見通しが持てないからだと考えます。自立するための丁寧な支援が必要となります。沖縄では、母子家庭等の自立と子どもの健やかな成長を支援するとして、民間アパート等を借り上げ、2年間は家賃を無料とし、その間、職業訓練や就労支援を行うほか、子どもたちの学習支援を行うなど、伴走型の自立支援が取り組まれています。支援の中身をその人や、そのケースに合わせて進化させているというのが特徴です。こうした支援が本当に有効だし重要だというふうに感じたところです。
そこで伺います。現在、本県では自立するための支援として、どんな取り組みをされているでしょうか。自立のためのステップハウスはどの程度利用されているでしょうか。法の改正を待たず、伴走型の沖縄のような支援の仕組みをつくるべきかと思いますが、見解を伺います。
間野小代美 男女共同参画推進課長
DV被害者が自立して新たな生活を始めることができるよう、女性相談所や婦人保護施設では、被害者の傷ついた心身を回復させるための心理的なケアをはじめ、住宅の確保、就業支援、様々な福祉制度の活用など、被害者に寄り添った支援を行っております。
ステップハウスにつきましては、被害者の保護と自立支援を一体的に行うために、婦人保護施設内に設置しております。昨年度は3世帯で利用されております。
県としましては、引き続き、婦人相談員が中心となって被害者に寄り添った支援に取り組むとともに、関係機関や施設等と連携して、被害者の自立を支援してまいります。
高瀬菜穂子 委員
寄り添った支援をしていただいているとは思いますけれども、相談件数に比して、ステップハウスの利用が大変少ないのが気になります。勇気を出して相談に来た人が、自立できる道筋をしっかり作っていただきたいと思います。
一般質問でも、堤議員から指摘がありましたけれども、「民間シェルター」への支援も喫緊の課題です。本年5月に内閣府は、「DV等の被害者のための民間シェルター等に対するあり方に関する検討会」の報告書を出しました。民間シェルターは、いち早くDV被害者支援における課題を提起し、先駆性、柔軟性、地域性、専門性を持つと指摘しています。自立のためのさまざまな知見が蓄積され、実践されてきた「民間シェルター」に対し、一時保護の「委託」だけでなく、支援が必要であると考えます。鳥取県では、法施行後、18年前ですけれども被害者支援事業の予算を10倍にして、民間シェルターの賃貸料のほか被害者がシェルターへ移動する際の交通費、入所直前の医療費の助成なども先駆的に行っていました。本県でも、自立支援に多大な力を発揮している民間シェルターに直接支援を行うべきだと考えますが、見解を伺います。また、国に対し、その予算を求めるべきかと思います。この点についても合わせてお答えください。
間野小代美 男女共同参画推進課長
民間シェルターの運営に対して財政支援を行うことにつきましては、県からの一時保護委託の件数が少ないっていうことに加えまして、民間シェルター独自の活動の実態を把握することが難しいという課題がございます。
このため、現在、国において、民間シェルターの先進的な取組みに対する支援策を検討するための実態調査が行われております。県としましては、こうした国の状況を注視してまいります。
高瀬菜穂子 委員
民間シェルターへの支援、連携は国でも模索されているということですので、本県においても支援を充実していただくよう要求しておきます。
DV防止には、若い時からの学習が必要だと思います。DVだと認識できるかどうかが、まず、重要であります。私は、2006年(平成18年)2月定例議会で、「デートDV」について取り組みを行うよう、強く求めていました。当時、長崎県などが先進的にデートDVについてのパンフレットなどをつくり、学習の場を提供していました。その後、本県でもパンフレット等がつくられました。どのような活用、取り組みがなされているでしょうか、伺います。
間野小代美 男女共同参画推進課長
県では、デートDV防止啓発リーフレットを平成26年度から県内すべての高校1年生に配布し、昨年度からは中学1年生にも、すべての中学1年生にも配布しております。
学校を通じて配布する際には、人権教育や学級活動などで学習教材として活用するようお願いしているところでございます。平成30年2月に実施しました調査では、約7割の学校が、デートDVについて生徒に説明した上で配布したと回答しております。
また、昨年度からは、デートDVについて専門的な知識を持つNPOなどの講師を、学校に派遣する事業も実施しているところでございます。
高瀬菜穂子 委員
デートDVのみならず、AV出演強要など性暴力をめぐるさまざまな問題を啓発する取り組みは、とりわけ重要だと思います。ぜひ、すべての学校で行われるよう取り組みの強化をお願いします。
また諸外国では「加害者に対する更生プログラム」が普及し、取り組みが行われていると聞きます。日本でもNPO法人などがこれを取り入れており、この問題の解決のためには、加害者の意識を変える「更生プログラム」は大変重要だと考えます。神奈川県のNPO法人女性・人権センターステップの理事長・栗原加代美さんは、「不思議なことにDV加害者の多くは被害者意識を抱いている。プログラム受講者の約8割は『俺をおこらせる妻が悪い、自分は被害者だ』と考える傾向があり、『妻が悪いことを証明しに来た』という発言をするとのことです。反対に被害者は『自分が夫を怒らせてしまった』という加害者意識が強いといいます。加害者と被害者の関係性が逆転していると、こういう場合にDVの発見が遅れる原因になるというふうに指摘をしています。加害者に自身のゆがんだ価値観を認識させることで、変わっていく、取り組みの中で、DVの親から子への「負の連鎖」を止める役割も果たすとしています。「加害者に対する更生プログラム」についても必要なことと考えますが、どのような取り組みを考えておられるでしょうか。
間野小代美 男女共同参画推進課長
加害者対応に関する取組みは、国において、被害者の安全を確保するための手法として有効であるとの認識に立って、加害者更生プログラムの実施基準の作成などについて調査研究が行われているところでございます。
県としましては、こうした国の状況を注視してまいります。
高瀬菜穂子 委員
国の調査研究を待つだけでなく、必要な調査研究を県としても進めていただき更生プログラムを早期に実施していただきたいと思います。
今後の課題ですが、支配・コントロール下にあってDVだと認識できない人をどう救うか、このことがあると思います。まずは、できるだけ情報を発信することが求められます。SNSなどによる情報発信や相談体制の構築について、見解を伺います。これら施策の実現には、相当な体制が必要となります。最後に相談体制の充実、強化についての見解を伺います。
間野小代美 男女共同参画推進課長
まずは、DVについての正しい理解を広く進めていくとともに、自分から相談することが難しい人が相談機関につながるよう、相談しやすい体制を整えることが必要です。
県では、この10月から男女共同参画センターあすばるにおいてメール相談を開始するとともに、DVをはじめ、パートナーとの関係ですとか、仕事や生き方など、様々な悩みに対応する中で、DVだと認識していない方への気づきを促しているところでございます。
またSNSを活用した相談につきましては、国において、ネット上のセキュリティに対応した窓口の開設ですとか、人材の育成、運用方法、それから相談後の関係機関との連携などについて、調査研究が行われているところでございます。県としましてもこの動向を注視してまいりたいと考えております。
また、相談体制につきましては、これまでも、女性相談所や配偶者暴力相談支援センター、男女共同参画センターあすばるなどにおきまして、被害者の状況に応じた対応を図ってきているところであり、今後も必要な体制の確保に努めてまいります。
高瀬菜穂子 委員
新たにメール相談も開始したということです。家庭内の暴力、殺人などの悲劇を生まないために、申し上げました様々な取り組みを大変と思いますが、旺盛に行っていただくことを強く要望いたします。そのためには、なんといっても、マンパワーですから、体制の強化は特に重要だということを強調しまして、質問を終わります。