● 21年12月10日 県議会報告
2021年12月10日 2021年12月定例会 高瀬菜穂子県議 「技能実習生等の妊娠・出産について 不登校問題について」(大要)
2021年12月10日 12月定例会・高瀬菜穂子議員一般質問 答弁(大要)
<技能実習生等の妊娠・出産について>
高瀬菜穂子 議員
日本共産党の高瀬菜穂子です。通告に従い、まず、外国人実習生等の妊娠・出産について伺います。
昨年11月 、ベトナム人技能実習生リンさんが、「妊娠が知られたら、帰国させられる」という恐れから、だれにも相談できないまま、双子の赤ちゃんを一人で死産しました。出産の痛手と死産のショックの中で、子どもに名前を付け、弔いの言葉を添えてタオルにくるみ、段ボール箱に入棺しましたが、そのまま入院となったリンさんは「死体遺棄罪」に問われ、1審では有罪判決が出されました。同様の事件が岡山、広島、福岡県福津市(2019年)でも起こり、逮捕されています。
2016年の法改正で、マタニティ・ハラスメント防止措置が事業者の義務として追加され、2020年更新の技能実習生手帳には妊娠・出産した場合の権利が明記されました。しかし、技能実習生には、その権利が周知されていません。
また、留学生については、妊娠を伝えたことで退学となったり、在留資格を失ったり、そのため福祉施策も受けられず、安定した環境で出産する権利が奪われている実態があります。
出産にあたって、経済的な理由で入院できない妊産婦の方に、その費用を助成する「入院助産制度」は、在留資格がない、健康保険に加入していない等の外国人の方も対象としていますが、本県では利用はありません。そうした中で死産に至った事例もあるのではないかと考えます。制度の周知と活用が必要です。
これ以上悲劇を生まないためには、管理団体や事業主などに法令順守を求めるとともに、予定外の妊娠を防げるよう避妊手段へのアクセスを高めること、妊娠・出産についての相談体制を充実させることや、医療機関へのアクセスをスムースに行えるようにすることが重要と考えます。そこで、以下知事に伺います。
まず、技能実習生の妊娠出産の権利に関する周知についてお尋ねします。技能実習生について、妊娠・出産等を理由とした解雇や不利益取り扱いは法律で禁止されています。こうしたルールについて、監理団体や受け入れ企業に対する周知徹底を図ることが必要と考えますが、どのように行われているのか伺います。
次に、多くの留学生・実習生は「妊娠しない」と誓約させられている実態もあり、相談できないまま悲劇が起きています。「妊娠出産何でも相談」のようなワンストップの相談窓口が必要だと考えます。現在の相談体制はどうなっていますか、体制を強化する考えはないでしょうか、お尋ねします。
次に、県が設立した「ふくおか国際医療サポートセンター」について伺います。ここでは、医療機関からの要請に対する医療通訳ボランティア派遣事業と電話通訳事業が実施されていますが、過去3年間のそれぞれの利用実績と2020年度の主な言語別内訳を明らかにしてください。加えて、この制度の周知をどのように行っているのかお答えください。
最後に、緊急避妊薬についてです。「第5次男女共同参画基本計画」には、予期せぬ妊娠を防ぐ緊急避妊薬を処方箋なしで購入することの検討が盛り込まれました。日本では、年間14万件に上る中絶が行われていますが、金属器で子宮内から掻き出す「掻爬(そうは)法」が主流であり、安全性に問題があるうえ、公的補助がなく高価です。性暴力やDV、望まない妊娠に対しても、安全で安価な緊急避妊薬は、女性が自分の意志で子どもを産む産まないを決める「リプロダクティヴヘルスライツ」の観点からも重要です。外国人女性だけでなく、日本に暮らすすべての女性のリプロの底上げになることから、早期実現を県として国に強く求めていただきたいと考えます。見解を伺います。
服部誠太郎 知事
技能実習生の妊娠等の権利に関する周知について
ご答弁を申し上げます。技能実習生の妊娠等の権利に関する周知についてでございます。
婚姻、妊娠、出産等を理由として、技能実習生に対し、解雇その他不利益な取扱いをすることや、技能実習生の私生活の自由を不当に制限することは、雇用機会均等法や外国人技能実習法において禁止されております。
こうしたルールにつきましては、出入国在留管理庁、厚生労働省、外国人技能実習機構から、監理団体、受入企業宛てに直接注意喚起が行われる等、周知が図られているところでございます。
県といたしましては、外国人材の受入企業が法令に則った適切な雇用管理ができますよう、一昨年9月から行政書士会に委託をいたしまして、常設の窓口を設置し、内容に応じ、法令に基づくアドバイス等を実施をいたしております。
また、今年度中に実施をいたします監理団体相互の研鑽を目的をしたセミナーにおきましても、技能実習生の婚姻、妊娠、出産等に係る適切な対応について、周知を図ってまいります。
留学生、技能実習生の相談対応について
次に留学生、技能実習生の相談対応についてお尋ねがございました。
県では、アクロス福岡にございます、県国際交流センター内に「福岡県外国人相談センター」を設置いたしております。この相談センターでは専任の職員2名を配置し、年末年始を除き毎日10時から19時まで、来所、電話、メールでの様々な相談に日本語のほか20言語で対応いたしております。
妊娠、出産に関しましては、センターを設置いたしました令和元年の7月以降、これまでに26件の相談が寄せられておりますが、その相談内容は多岐にわたっておりまして、外部の機関と協力して対応することが不可欠でございます。
このため、例えば、日本での出産を希望する留学生につきましては、行政書士会につなぎ、在留期間延長申請を支援をいたしました。
またコロナ禍の中で、妊娠中の妻の早期の帰国を希望する技能実習生につきましては、総領事館につなぎ帰国便の手配を支援いたしました。
さらに、未婚のまま妊娠をし出産を控える技能実習生につきましては、行政書士会の協力をいただきまして、居住地の市役所と一緒に今後の対応をアドバイスするなど、相談内容に応じましてそれぞれ適切な機関と協力しながら対応をしているとこでございます。
引き続き、このセンターにより、在住の外国人が抱える様々な不安や悩みの相談に対応してまいります。
ふくおか国際医療サポートセンターの医療通訳について
ふくおか国際医療サポートセンターの医療通訳の利用実績についてでございます。
通訳ボランティアの派遣実績でございますが、平成30年度が91件、令和元年度が174件、令和2年度が62件となっておりまして、令和2年度の内訳は、英語が52件、中国語が10件となっております。
また、電話通訳の実績につきましては、平成30年度が778件、令和元年度が1,083件、令和2年度は863件となっておりまして、令和2年度の内訳は、英語が254件、ベトナム語215件、中国語167件、ネパール語134件、タガログ語34件などとなっております。
県では、ふくおか国際医療サポートセンターを多くの外国人の方に知っていただけますよう、センターのサービス内容や利用方法につきまして、21の言語に対応したホームぺージを開設しております。県内の市町村、医療機関、日本語学校、留学生部門を持つ大学などに紹介しているところでございます。
また、今年8月には、新たに県内の外国人技能実習監理団体に対しまして、このセンターを紹介したチラシを配布をいたしました。
緊急避妊薬の処方箋なしの購入について
次に緊急避妊薬の処方箋なしの購入についてでございます。
国の「第5次男女共同参画基本計画」では、女性の包括的な健康支援のための体制を構築する一環といたしまして、予期せぬ妊娠の可能性が生じた女性が、処方箋なしで緊急避妊薬を適切に利用できるよう検討することが盛り込まれておりまして、現在、厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」において検討が行われております。
緊急避妊薬を手に入れることは性や生殖に関する女性の権利であるとして、処方箋なしでの購入を望む声がございます一方で、産婦人科医からは処方箋なしの購入は、不正な転売の可能性や性感染症リスクの拡大の可能性などがあることが懸念されるとの意見がございます。
県といたしましては、予期せぬ妊娠の可能性が生じた女性が薬を適切に利用できるよう、厚労省の評価検討会議において、この課題を分析した上で、医療関係者、消費者、販売関係者など幅広い層の合意が得られることが必要と考えておりまして、その議論を注視してまいります。
<不登校問題について>
高瀬菜穂子 議員
次に、不登校問題について伺います。
近年、増加傾向にあった不登校児童生徒はコロナ禍、一段と増え、昨年度、小中学校の不登校は全国で19万人を超えました。県教委も先日「福岡県不登校児童生徒支援グランドデザイン」を公表し、取り組みをすすめておられます。
しかしながら、昨年度の本県不登校児童生徒数は、小学校で3,338人、全国5位、中学校6,399人で全国7位、高等学校2,493人で全国6位、合わせると1万2,000人以上にのぼり、1,000人あたりで見ても、小中学校で全国6位の高さです。多くの児童生徒が学習の場や居場所を失っていること、また、引きこもりや自死につながるケースがあることを考えますと、その対応は喫緊の課題です。
先日、フリースクールで指導をしている方から話を伺いました。「『助けて』と連絡があればすぐに駆け付けるようにしている。母親が子どもに手をかけようとしていた現場に行きあわせたこともある。自傷行為を繰り返す子どももいる。発達障害がありつまづいた子どもも多い。自分の子どもも自閉症で不登校だった。子どもはきっかけがあれば必ず前向きになる。行政としてももっと支援の手を広げてほしい」と切実な声でした。
そこで、教育長にお尋ねします。
まず、コロナ禍で増えている子どもの自殺です。文部科学省の発表では、昨年学校から報告のあった自殺した児童生徒数は415人となっており、前年度から約100人も増えています。本県における自殺者数について、明らかにするとともに、どのような予防の取り組みを行っているのか、お答えください。
次に、不登校児童生徒への支援、特に「不登校特例校」設置についてです。2017年制定の教育機会確保法では、不登校児童生徒に対する支援と責務が明記され、「不登校特例校」の設置がその対策として位置付けられました。現在8都道府県に17校設置され、仙台市や大阪市での設置計画も報道されています。不登校児童生徒が極めて多い本県においても、設置について市町村と協議をすべきではないでしょうか。わが会派は多様な学びの保障としての夜間中学の設置を求め続けてきましたが、いまだ県域では実現していません。学校外の機関での指導やICT活用などによって出席扱いとなった児童生徒数は、全国で3万人弱と少なく、教育支援センターの充実、夜間中学の設置とともに、フリースクール等との連携強化、「不登校特例校」設置を本県でも検討すべきと考えます。教育長の見解を伺います。
また、フリースクールの果たす役割はますます重要になっており、連携協力が県のグランドデザインでも位置付けられています。財政支援の抜本的強化が求められていると考えますが、知事の見解を伺い、質問を終わります。
服部誠太郎 知事
フリースクールに対する財政支援について
最後にフリースクールに対する財政支援についてお尋ねがございました。不登校の子どもたちに多様な教育機会を提供する取組みは、学校への復帰や社会的な自立を図っていく上で重要であると認識をいたしております。
このため、県では、全国に先駆けまして、運営経費の一部助成を平成19年度から開始をし、当初4施設でございましたが、今年度は14施設に対し助成を行っております。
今後も、不登校の子どもたちの状況に応じたフリースクールの活動が継続できるように支援をしてまいります。
吉田法稔 教育長
本県における児童生徒の自殺者数及び自殺予防の取組みについて
本県における児童生徒の自殺者数及び自殺予防の取組みについてでございます。
文部科学省の調査では、都道府県別の自殺者数は公表されておりません。ただし、厚生労働省の調査によりますと、本県の「20歳未満」の自殺者数は、令和元年の21名から令和2年の28名へと増加をしておりまして、児童生徒を含む若者の自殺者数の増加については注視が必要であると考えております。
このため、県教育委員会では、市町村教育委員会や各県立学校に対しまして、定期的なアンケート等による児童生徒の心身の状況の把握、自殺予防リーフレットの活用、24時間電話相談窓口やSNSによる相談窓口の周知のほか、命を大切にする心を育む道徳教育の充実などを要請してきたところでありまして、引き続き、自殺予防の取組みの徹底を促してまいります。
不登校児童生徒に対する支援について
不登校児童生徒に対する支援についてでございます。県教育委員会では、本県の不登校児童生徒数が増加傾向にあることを重大な教育課題であると捉えておりまして、児童生徒が安心して教育を受けられる魅力ある学校づくりを継続しつつ、多様で適切な教育機会の確保による社会的な自立を目指すことが重要であると考えております。
具体的な取組みとしましては、ICTを活用した教育相談や学習支援、教育支援センターの機能強化、フリースクールと連携した支援や訪問活動による家庭支援の充実を進めてまいります。
また、フリースクールと学校・教育委員会との連携を強化するために、フリースクール関係者も参加する「福岡県不登校児童生徒支援会議」を立ち上げたほか、各地域でのネットワークの構築も進めてまいります。
県教育委員会としましては、まずは各市町村において、このような取組みが広がることを促してまいりますけども、各地域のニーズを踏まえて、不登校特例校の設置を検討する市町村があった場合には、県としても相談に応じてまいりたいと考えます。
なお、県域の夜間中学としましては、大牟田市において設置が検討されておりまして、適宜相談に応じているところでございます。
〈要望〉
高瀬菜穂子 議員
ご答弁いただきました。外国人実習生等の問題について知事に要望いたします。法令や制度の周知に取り組んでいただいているとの答弁ですが、不十分な実態を関係者からお聞きしています。周知に努めていただくよう重ねてお願いします。外国人支援を行っているNPO団体などが県内にもありまして、きめ細かな生活支援活動をされています。そうした支援団体と協力し、セミナーの開催や情報交換など、行っていただきたいと思います。国策で外国から来てもらい、日本の産業を支えている方が、妊娠出産で苦しむことがないよう、また人権が守られるよう力を尽くしていただくよう要望しまして、質問を終わります。