● 22年03月11日 県議会報告

2022年3月11日 2022年予算特別委員会 立川由美委員 質疑・答弁 「行政のデジタル化について」(大要)



 

2022年3月11日   2月定例会(予算特別委員会)立川由美委員質疑(大要)

 

 

 

<行政のデジタル化について>

 

 

立川由美 委員

 

 みなさん、こんにちは。日本共産党の立川由美です。通告に従い、行政のデジタル化について質問いたします。昨年の5月12日に成立した、いわゆる「デジタル」関連法により、首相をトップにしたデジタル庁が発足しました。各省庁や自治体でバラバラだったシステムや、個人情報保護のルールを共通化するとともに、マイナンバー制度の利用拡大や民間企業のデータ利用を促し、新しいビジネス創出などにつなげていくことが狙いとされています。

 わが党は、県民のくらしに役立つデジタル化を否定しているわけではありません。

 この間、国や本県において、インターネット上で、個人情報が流出する事例が相次ぎました。デジタル化にあたって個人情報の保護を厳格に行い、住民からの信頼を得ることが不可欠だと考えます。そこで、行政のデジタル化についてお尋ねいたします。

 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律によって、行政は標準化基準に適合するデジタル化を行わなければならないとされています。標準化とはどのようなことですか。お伺いいたします。また標準化について、その概要をお示しください。

 

 

道脇寿満 デジタル戦略推進室長

 

 標準化の対象となっている業務は、現時点で市町村が行う、税や健康保険、年金、戸籍などの20の業務となっております。

 政府は、令和2年12月に「デジタル・ガバメント実行計画」を閣議決定いたしまして、令和7年度までに標準システムへの移行を完了するよう求めております。

 市町村は、概ね、令和4年に標準システムの移行計画を策定し、令和5年度以降にその具体化を図るといったスケジュールとなります。

 

 

立川由美 委員

 

 20の業務が対象になっているということですよね。「標準化」というのは自治体ごとにバラバラになっているシステムを統一のルールで共通化することだというふうに理解できますが、それでは、標準化したシステムについて、どのように管理するのでしょうか、お尋ねいたします。

 

 

道脇寿満 デジタル戦略推進室長

 

 標準化のシステムについては、政府が構築して政府、地方自治体が利用できる「ガバメントクラウド」上に、仕様を統一した業務システムを、事業者を通じてインターネット上のサービスとして提供するものでございます。各市町村のデータは、それぞれの市町村が個別に管理をすることとなっております。

 

 

立川由美 委員

 

 標準化システムへ移行するとのことですが、市町村では、たとえば本県でも子どもの医療費助成などが独自に行われています。このような市町村独自の施策については、デジタル化のなかでも維持し、発展させるべきだと考えます。市町村の独自施策のシステム化や仕様変更について、国からどのような通知が来ていますか、お伺いいたします。

 

 

道脇寿満 デジタル戦略推進室長

 

 国は、市町村が実施する独自施策については、標準システムにオプション機能を用意することとしております。

 オプション機能で対応できない独自施策については、別途システムを構築することになります。

なお、標準システムやオプション機能自体の仕様変更で対応することは認められておりません。

 

 

立川由美 委員

 

 オプション機能によって独自施策の継続は可能なんですね。このことを自治体に周知すると共に、国に財源保障を求めるべきだと考えます。見解を伺います。

 

 

道脇寿満 デジタル戦略推進室長

 

 県は、市町村に対し、独自施策のシステム化をはじめとして標準化に関する国からの様々な情報について、継続的に情報提供しているところでございます。

 また、来年度の実施を計画をしております、市町村への専門家の派遣事業におきまして、標準システムやオプション機能を活用できるよう支援してまいります。

 標準システムやオプション機能の活用については、国の助成の対象となっているところでございますが、オプション機能でも対応できない市町村の独自施策のシステム化については、国の助成の対象外となっております。

 本県では、市町村の独自施策のシステム化に関して、技術的な助言や、費用の低減が見込める、複数の市町村による共同開発や共同利用の検討を支援してまいります。

 

 

立川由美 委員

 

 お答えいただいたこと、とても重要だと思います。市町村の独自施策が維持できるようお願いいたします。

 2020年度には、クラウドサービスを利用する組織での情報管理体制の不備や情報リテラシーの不足、システムの設定漏れなどが原因となり、不正アクセスや個人情報・機密情報を漏えいさせてしまったという事例が何度も報道されました。国が構築するガバメントクラウドの安全性はどのように担保されているのでしょうか。あわせて、本県として、市町村の情報漏えい対策にどのような支援をしようと考えていますか。お伺いいたします。

 

 

道脇寿満 デジタル戦略推進室長

 

 標準システムが構築される「ガバメントクラウド」について、政府は、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)、これはイスマップといいますけれども、その基準を満たすことに加えて、不正アクセス防止やデータ暗号化などにおいて、最新かつ最高レベルの情報セキュリティが確保できることなどを条件にしております。

 このため、市町村が独自にサーバーを構築することに比べてセキュリティが確保されるものと考えております。

 本県では、これまでも市町村のセキュリティ対策の向上を図るため、セキュリティ対策に関する研修やサイバー攻撃に対する実地研修を実施しており、引き続き、研修による支援を行ってまいります。

 

 

立川由美 委員

 

 セキュリティ確保はしっかりやっていただきたいと思います。十分安全が確保されているのとのお答えですけども、大量の情報をクラウドに共有することで生じるリスクもあるのではないでしょうか。東京商工リサーチの調査によれば、2012年から2020年の間に、個人情報の漏えい、紛失事故は累計で460社、個人情報は1億1,444人分となっています。日本の人口の9割が被害にあった計算です。クラウドを利用することによるデメリットにもしっかり目をむけていただきたいと思います。

 2015年の個人情報保護法改定により、行政機関や独立行政法人が保有する個人情報を匿名加工した上で、民間事業者から利活用する提案を募り、審査を経て提供する仕組みが作られました。この仕組みのもとで、東京の横田基地騒音訴訟や国立大学生の情報が利活用されようとしたことを、参議院の国会審議でわが党の田村智子参議院議員が明らかにしました。大阪大学は提供対象の一つとして「授業料免除ファイル」を示しましたが、家族の収入や母子・父子世帯であることに加え、障害者世帯の有無や生活保護世帯の有無まで提供しようとしていました。こうしたセンシティブなですね、情報が提供されることも、そのものが大問題です。

 「デジタル関連法」の成立により、この仕組みの名称が「匿名加工制度」に統一をされて、都道府県、政令市に義務付けられようとしています。そこでお尋ねいたします。本県として、保有する個人情報を匿名加工して利活用した事例はありますか。お伺いします。あわせて、匿名加工して提供する際に、本人同意の厳格化や、個人情報を保護したり削除したりできる「忘れられる権利」を導入すべきだと考えます。見解を伺います。

 

 

大群拓也 県民情報広報課長

 

 本県では、匿名加工情報の提供制度は導入しておらず、現時点においては、保有する個人情報を匿名加工して利活用した事例はありません。

 しかしながら、改正個人情報保護法が令和3年5月に公布され、公布から2年以内に行政機関等匿名加工情報の提供制度が導入される予定です。

 導入後は、本県が保有している個人情報ファイルについて、行政機関等匿名加工情報をその用に供して行う事業に関する提案を募集し、法律の定める基準に適合すると認めるときは、利用に関する契約を締結することができるとされていますので、この法律の規定に従い、適切に対応してまいります。

 「匿名加工情報」の提供に際しては、特定の個人を識別することができないように個人情報を加工し、復元できないようにしますので、個人情報には該当しなくなるものとされています。

 したがって、法律に定められている、個人情報の提供に当たっての「本人の同意」や「本人による消去請求」といった規定は適用されません。

 

 

立川由美 委員

 

 個人情報を匿名に加工し、復元されないようにすると答弁がありました。いくら加工してあると言っても、企業が持つ膨大なデータと照らし合わせれば、個人の特定につながりかねないと危惧します。

 自治体はこれまで、住民のために必要があって個人情報を取り扱ってきました。社会保障や福祉の施策は、社会的な立場が弱い方を対象にしたものが多くあります。支援を希望する方は、多くの個人情報やプライバシーを自治体に提供するという関係になってきました。しかも、ほかに代替手段がないので、行政サービスを頼るわけです。情報を利活用するということになれば、県民が不信感を持ち、行政サービスの利用を躊躇するのではないかとの懸念があると指摘しておきます。

 本県が所管する行政サービスや業務の多くは、窓口で申請や届出を行うものです。この窓口業務の代わりをAIチャットボット方式で行うサービスが自治体によって始まっていますが、技術進歩により、高精度な判断と処理結果が期待できる反面、誤った情報や、誤認識による判断を繰り返す可能性も指摘をされています。

 窓口対応の負担を軽減させる目的でAIを導入し、オンライン窓口対応に差し替えていくことには課題があると考えます。県として窓口業務の役割をどのように認識していますか。

 

 

道脇寿満 デジタル戦略推進室長

 

 県民の皆様からのオンラインでの問い合わせに対し、AIが自動回答するAIチャットボットにつきましては、24時間365日の問い合わせが可能となることや、問合せ対応者の経験の差による回答内容・回答時間のばらつきがなくなることなど、利便性の向上に資するものであることから、令和2年度より県のホームページに導入したところでございます。

 またこれにより問い合わせの少ない質問や、相談しながら質問したいといった個別対応が必要な質問など、AIチャットボットの活用が難しい案件に、職員の対応を集中することが可能となり、問い合わせ対応の質の向上につながると考えております。

 県は、窓口業務を、県民の皆様との重要な接点であると考え、今後ともAIチャットボットも含めて、デジタル技術を上手に活用することで、サービスの向上に努めてまいりたいと考えております。

 

 

立川由美 委員

 

 窓口業務を、県民の皆様との重要な接点であると考えているとのお答えをいただきました。たいへん重要だと考えます。総務省の高官は、システムの標準化とAIの活用が進めば、「場合によっては、AIやマイナンバーカード等を活用した無人窓口も実現可能なのではないかと思う」と述べています。とんでもない発言です。窓口業務をいっそう充実していただきますよう要望いたします。

 行政のデジタル化について今回お聞きしました。国は、マイナンバーカードをデジタル化の目玉としています。2022年末にほとんど全ての国民に行き渡らせるという目標に対し、マイナンバーカードの普及は約4割にとどまっています。NTTデータ経営研究所が2021年6月に行った調査では、マイナンバーカードを取得しない人の理由として、1位が「なくても生活できる」、2位が「個人情報漏えいが心配」となっています。本県として、個人情報を適切に管理し、県民に信頼される施策に取り組むよう要望して、質問を終わります。

 

 

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