● 23年03月14日 県議会報告
2023年3月14日 2023年予算特別委員会 高瀬菜穂子委員 質疑・答弁 「私立高等学校への支援制度について」(大要)
2023年3月14日 2月定例会(予算特別委員会)高瀬菜穂子委員質疑(大要)
<私立高等学校への支援制度について>
高瀬菜穂子 委員
日本共産党の高瀬菜穂子でございます。通告に従いまして、「私立高等学校への支援制度について」質問いたします。
「私立高等学校に通う生徒の保護者負担軽減のための支援制度」、「私立高等学校等就学支援金受給世帯の支給基準に係る収入別の対象生徒数」、「県内私立高等学校の生徒数、専任教員数、常勤講師数、非常勤講師数の10年前との比較」の3つの資料を執行部にお願いをしておりますので、委員長、お取りはからいをお願いいたします。
簡潔に資料の説明をお願いいたします。
永渕健二 私学振興・青少年育成局 私学振興課長
まず①の「私立高等学校に通う生徒の保護者負担軽減のための支援制度」についてでございます。
令和4年度現在、国の全額負担で、年収約910万円未満の世帯を対象に授業料を支援する「私立高等学校等就学支援金」。国1/3,県2/3の負担で、住民税所得割非課税等の世帯を対象に、授業料以外の教育費を支援する「私立高校生等奨学給付金」。本県独自の制度として、住民税所得割非課税等の世帯を対象に、授業料及び施設設備費等を支援する「私立高等学校等学校納付金軽減補助金」がございます。
続きまして、②の「私立高等学校等就学支援金受給世帯の支給基準に係る収入別の対象生徒数」についてでございます。
令和4年7月1日現在、年収約590万円未満の世帯が26,386人、年収約590万円から910万円未満の世帯が14,245人、合計で40,631人となっております。
最後に、③の「県内私立高等学校の生徒数、専任教員数、常勤講師数、非常勤講師数の10年前との比較」についてでございます。
令和4年5月1日現在、生徒数は、54,337人となっており、10年前と比較して687人減少しております。
また、専任教員は2,300人、常勤講師は807人、非常勤講師は、409人となっており、10年前と比較して、それぞれ31人増、105人増、11人減となっております。
高瀬菜穂子 委員
ありがとうございました。それではまず、①の県内の私立高等学校に対する支援ついてお尋ねします。私立高等学校については就学支援金制度が充実してきたこと、また、只今ご説明がありましたように、県の給付金・補助金制度が充実してきたことで、特に低所得層の中学生の進路選択の幅が大きくひろがりました。この助成制度の拡充は20年前とは、本当に隔世の感があります。学習権保障に大いに寄与していると考えます。しかし一方で、子育て世帯の貧困化や昨今の物価高騰などもあり、私学に通う生徒の状況は決して十分に安心とは言えません。
全国私教連が2022年に調査を行ったところでは、アルバイトをする生徒が増え、修学旅行等の行事に参加しない生徒がいるとのことです。3か月以上の滞納生徒の割合は、以前よりは大幅に少ない0.54%でしたが、前年よりもわずかに増えています。本県は1.46%となっており、全国平均を上回っています。
県内私立高等学校生徒の経済的理由による退学について、県はどのように把握しているでしょうか。把握している場合、退学者数はどうなっているか。お答えください。
永渕健二 私学振興・青少年育成局 私学振興課長
県では、毎年、県内の各私立高等学校に対し、中途退学の状況に関する調査を行っております。この調査のよりますと、
令和元年度は、中途退学者1,075人のうち、経済的理由が38人。
令和2年度は、中途退学者670人のうち、経済的理由が7人。
令和3年度は、中途退学者780人のうち、経済的理由が1人となっております。
高瀬菜穂子 委員
経済的理由による退学は4年前には38人、昨年度は1名ということで、確実に減っているのだというふうに思います。しかしながら中途退学者は、昨年度でも780人ですから、かなりの数になります。進路変更や家庭の事情などの理由で退学かと思いますけれども、以前から、経済的理由とは言いにくいために、他の項目にしているとの指摘もありました。実際には経済的理由による退学も1名以上ではないかと推察をいたします。
就学支援金は充実してきているものの、年収590万未満の世帯と、590万から910万の世帯では、金額に差があり、590万に近い世帯、多子世帯などの負担感は大きいと思われます。
全国私教連によると、東京、神奈川、愛知、大阪には、590万円以上の世帯に独自の上乗せ制度をつくっているということです。私立高校生の4分の1以上が年収590万円から910万円の所得層である、北海道、新潟、岡山、福岡、熊本で独自の制度がないというふうに指摘をしています。本県でも東京などと同様の上乗せ制度をつくるべきではないかと考えますが、見解を伺います。
永渕健二 私学振興・青少年育成局 私学振興課長
高等学校等就学支援金は、国が、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図ることにより、教育の実質的な機械均等に寄与するために創設したものでございます。現行制度上も全額国庫負担で行われており、制度を拡充する場合も、国が責任を持って行うべきものと考えております。
県では、年収590万円を境に、支給額に約30万円の差があることから起こる、年収から授業料負担額を差し引いた額に逆転現象が生じないよう制度を是正して、必要な財源を全額国庫で確保するよう、県議会のみなさまとともに国に求めているところでございます。
高瀬菜穂子 委員
国に対して、就学支援金の拡充を求めているとのことです。その必要性については県としても認識されているということですね。東京都は高校生を対象としたさまざまな支援制度を設けており、私立高校を対象とした授業料軽減助成金では、年収910万円未満で年間35万200円の軽減額が適用されます。国の支援金と合わせますと46万9,000円まで受けられる手厚い制度となっています。千葉県では、県の授業料減免制度や入学金軽減制度をつくっており、年収750万円未満で所得に応じ月額授業料の全額から就学支援金を除いた差額を免除しています。神奈川県でも、収入に応じて国の就学支援金に県独自の学費補助金を上乗せし、多子世帯給付、年収750万円未満の世帯の入学補助金制度もつくっています。
本県の場合、歴史的にも高校教育の4割を私学が担ってきており、その率は、全国3位ですから、私学への補助は手厚くあるべきだと思います。
国の高等学校等就学支援金は対象が授業料に限られています。全国私教連は、私立高等学校の都道府県ごとの施設設備費など授業料以外の負担額の平均を調査しており、これを見ると平均20万円前後の自治体で滞納が多くなっているということです。本県もその一つであります。先ほど紹介がありましたように、県としても、特に低所得層に対しての給付や補助制度をつくっていますが、さらなる制度の拡充を国に求めるとともに、県独自の制度拡充を行うべきではないでしょうか。見解を伺います。
永渕健二 私学振興・青少年育成局 私学振興課長
授業料以外の教育費に対する支援制度としましては、国の「私立高校生等奨学給付金制度」があり、国と県で、財源を負担して、住民税所得割非課税等の世帯に対して、支援を行っているところでございます。
この制度では、世帯の第1子と第2子以降の支給額に差があることから、これを解消するよう、国に対して毎年要望しているところでございます。
また、県では、住民税所得割非課税等の世帯の生徒が経済的理由により修学が困難とならないよう、平成2年度に、県独自の措置として、「福岡県私立高等学校等授業料軽減補助金」を創設いたしました。その後、名称を「福岡県私立高等学校等学校納付金軽減補助金」に改め、施設設備費等を補助対象に加えるなど、拡充してきたところでございます。
この制度により、国の就学支援金や奨学給付金に加えて、住民税所得割非課税等の世帯に対して支援を行っているところでございます。
高瀬菜穂子 委員
支援制度を拡充してきたことは承知をしておりますけれども、私学への依存度が高い本県としては、さらなる拡充を求めたいと思います。国は、高校・大学までの段階的な無償化を定めた国際人権A規約(13条2項b、c)の適用を留保してきた問題で、2012年に「留保撤回」を行いました。この留保撤回は、実質的な高等教育の無償化を国際的にも約束したことになります。締約国160カ国(2012年8月現在)のうち、これは2012年時点ですけども、日本とマダガスカルだけが留保していて大変不名誉でした。これを撤回したわけで、国としても、実質的な高等教育の無償化に向けて後れを取り戻す予算措置を行うよう県からもいっそう求めていただきたい。県独自の支援策の強化も併せて強く求めます。
さて、何度も申し上げますが、本県の高校教育はその4割を私学に依存していますから、私学教育の質の確保は、重要な課題です。要求資料によりますと、2022年度の専任教員、常勤講師及び非常勤講師の合計3,516人のうち、非正規教員である常勤講師及び非常勤講師は1,216人となっており、1/3を超え、また、その割合は10年前よりも大きくなっています。
直接指導に当たる教員の非正規率が高いということは、安定的で行き届いた教育の保障という観点から問題と考えますがどうでしょうか。また、正規化に対してどのような取組みを行っているのか伺います。
永渕健二 私学振興・青少年育成局 私学振興課長
私立学校に対する経常費補助金では、正規雇用の教諭、常勤講師、非常勤講師それぞれの配置数に応じて必要な経費を助成しているところでございます。私立高等学校におきまして正規雇用の教員と非正規雇用の教員をそれぞれどのような割合で採用するかにつきましては、私立学校の設置者である学校法人の教育方針あるいは経営方針によって判断されるものと考えております。
高瀬菜穂子 委員
正規と常勤、非常勤とでは補助に差をつけているということなんですけれども、そしてまた学校法人のこの採用については、学校法人の裁量ではありますけれども、3分の1を超える非正規率というのは全国でもトップなんですよね。改善ができるように、そのためには、やはり経常費補助を増やすなどの支援の強化が必要だと思います。私学に対する経常費補助の拡充を求めたいと思います。
次に、私学における特別支援教育について伺います。特別支援学校、特別支援学級の児童生徒が急増しております。中学校における特別支援学級の生徒たちの進学先として、私立高等学校が受け皿になっている実態があると承知をしております。私立高等学校の特別支援教育に対して、県はどのような支援を行っているのか。また活用はされているのか、伺います。
永渕健二 私学振興・青少年育成局 私学振興課長
特別支援教育を実施する私立高等学校に対しては、経常費補助金の加算措置として、発達障がいの生徒を支援する校内委員会の設置に、1校当たり7万5千円。関係諸機関との連携・調整を行うコーディネーターの配置に、1校当たり7万5千円。専任教職員の配置に、1人当たり200万円。手すりの増設・トイレの改修等の施設整備に、対象生徒1人当たり9万5千円。といった補助を行ってまいりました。
さらに令和2年度からは、生徒の介助などを行う特別支援教育支援員の配置に、1校当たり100万円の加算を新設いたしました。
また、その活用状況でございますが、令和3年度の実績では、校内委員会の設置は 26校。コーディネーターの配置は、18校。施設整備は2校、生徒56名分。特別支援教育支援員の配置は、1校、に対し助成をおこなったところでございます。
なお専任教職員の配置については、活動実績がございませんでした。
高瀬菜穂子 委員
私立高等学校の特別支援教育に対して様々な支援がなされていることは分かりました。特に、施設整備に2校で56名分も適用されたということは、これ本当に多くの支援を必要とする生徒を受け入れていただいているということがよくわかります。校内委員会やコーディネーターの配置はそれぞれ26校、18校とのことですが、実際には、ほとんどの学校で特別支援教育に取り組まれているのではないでしょうか。その校内委員会、コーディネーター配置に7万5千円というのは支援金として、あまりにわずかです。担っている役割の大きさを勘案し、拡充を図るべきと考えます。
そのような中、特別支援教育の専任教員配置加算は活用されていませんが、この点について、どのような見解を持っているか。また今後の取組みをどう考えているか伺います。
永渕健二 私学振興・青少年育成局 私学振興課長
専任教員の配置加算を利用しない理由について、特別支援教育に係る他の加算メニューを活用している私立高等学校に聴き取りを行いました。
それによりますと、現在、各学校に在籍している特別支援が必要な生徒は、一般の生徒と一緒に授業を受けており、その対応についても、特別支援教育に特化した教員ではなく、各クラスの担任教員が行い、必要に応じてスクールカウンセラーや特別支援コーディネーターと連携して対応しているため、専任の教員は配置していないとのことでした。
特別支援が必要な生徒は増加傾向にございます。受け皿としての私立高等学校の役割が高まることにより、特別支援教育に特化した専任教員を配置する学校が出てくることも考えられます。このため、引き続き、制度の内容について周知してまいります。
高瀬菜穂子 委員
専任教職員の配置に200万円は特別支援教育の支援メニューの中でも、比較的大きな予算ですが、活用されていないのは残念です。特別支援が必要な生徒と一般の生徒と一緒に授業を受けているとのことですが、それならばなおさら1クラスの人数を減らしたり、複数教員で指導に当たったりということが必要になると思います。独自の教材を自己負担でつくっているとの声も聞いています。そうしたさまざまな取組みに対して、広く補助が行われるべきだと思います。この1校200万円の専任教員配置について、周知とともに、予算を柔軟に使えるよう改善を求めます。
高校における特別支援教育に特別に大きな役割を果たしている私学に対して、抜本的な支援強化を強く求め、質問を終わります。ありがとうございました。
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