● 17年10月02日 県議会報告
2017年10月2日 2017年決算特別委員会 山口律子委員質疑・答弁「市町村国保の広域化について」(大要)
≪2017年決算特別委員会≫
2017年10月2日
市町村国保の広域化について(大要)
山口律子 委員
日本共産党の山口律子です。市町村国保の広域化について質問します。
来年度(2018年度)より県が市町村と共に国民健康保険の運営を担いますが、国保の「広域化」に向けて県は2010年に「福岡県市町村国保広域化支援方針」を策定し、2013年4月に第二次支援方針の改正、2016年4月に第三次支援方針を改正しました。
このなかで国保の「広域化移行」に向けて一般会計からの法定外繰り入れや繰り上げ充用の解消を強調してきました。そこで現状がどうなっているのか伺います。
兵頭正俊 医療保険課長
市町村国保の収支の現状についてでございます。
平成27年度においては、県内60市町村のうち49市町村が、総額約155億円の一般会計からの法定外繰入を行っております。また、当該年度において歳入が不足する場合、翌年度の歳入を繰り上げて充てる繰上充用につきましては、同じく27年度において、33市町で約93億円が計上されているところでございます。
山口律子 委員
支援方針では解消を強調してきましたが、結果は法定外繰入れも繰上充用も増えていることを確認したいと思います。
2点目の質問に入る前に委員長にお願いがございます。
市町村別の国民健康保険料について、過去5年分の保険料率(所得割、資産割、均等割及び平等割)の推移とモデル世帯の国民健康保険料の一覧について、資料請求していますので、お取り計らい願います。
法定外繰入れや繰上げ充用解消などのため、県内の各市町村では保険料の値上げが相次ぎ、資料1にあるように平成25年度から平成29年度にかけて県内28の自治体が値上げに踏み切っています。
国保の被保険者は他の医療保険と異なり高齢者の割合が高いので、医療費水準が高く低所得者が多いために所得水準が低いという構造的課題を抱えています。
資料2は県内市町村のモデル世帯の国民健康保険料の一覧表です。
昨年田川市は一挙に3割も保険税を値上げして、資料にあるように県内で最も高い保険者となっています。その田川市の平成28年度の国保特別会計の決算資料にありますが、田川市の被保険者世帯の所得階層でみると所得0円が51.5%、100万円未満が31%も占めています。県のモデル世帯、夫婦と2人子どもの4人世帯 給与収入225万1千円ですと、田川市の保険税が年額270,500円と給与収入の実に12.0%となっており保険税が払えないと悲鳴の声が上がっています。
国保料は今後も高齢化や医療技術の進歩に伴い医療費の伸びが予測されていますが
それに連動して仮に国保料の値上げが続けば国民皆保険制度は重大な危機に直面すると思います。その認識について伺います。
兵頭正俊 医療保険課長
国保には、小規模保険者である町村が存在し、財政が不安定になりやすいといった財政運営を行う上での課題があります。今回の改革で、国保への財政支援の拡充により財政基盤が強化されるとともに、平成30年度から都道府県も国保の保険者となり、県単位で財政運営を行うことによって、制度が安定化し、国民皆保険の基盤である国保制度が持続可能なものとなると認識しております。
山口律子 委員
はたしてそうでしょうか。
国は一方で地域医療構想で病床数の削減を打ち出し、県が医療費抑制の司令塔の役割を担わされています。医療費を抑制するためには国保の財政運営についても県が主体となることを国は求めています。今回の国保「広域化」の狙いがそこにあるということを申し上げておきます。
国は平成27年度より国保の基盤強化のため低所得者層を対象に保険者支援制度を 拡充し、全国ベースで1,700億円、本県では約60億円を60市町村に配分しました。
更に国は、国保の広域化に移行する来年度より追加で全国ベースで1,700億円投入すると言っており、合わせて3,400億円の公費が措置されることとなります。しかし全国市町村の法定外繰入れの総額は3,900億円にのぼり繰り上げ充用を含めると3,400億円程度の財源投入では赤字の解消はもとより今後の医療費の伸びに応えることにもならないと思います。県の見解を伺います。
兵頭正俊 医療保険課長
国のガイドラインでは、赤字を抱える市町村においては、その実態を踏まえた計画を策定し、段階的な赤字の解消や削減に努めることとしております。
県といたしましては、それぞれの市町村の実態を踏まえ、市町村と十分に協議を行いながら、指導を行ってまいりたいと考えております。
山口律子 委員
そのことを確認したいと思います。
国は新制度移行によって保険料の急変(値上げ)を避けるため新たな試算方針を通知し、この通知に基づき制度変更により被保険者の保険料負担が急激に上がらないように市町村の財政負担の緩和措置について県の国保運営協議会において審議が行われていると伺っています。負担緩和は必ず行うべきと考えますが、県の見解を伺います。
兵頭正俊 医療保険課長
制度移行に伴い、県は、これまでそれぞれの市町村が算定していた保険給付費等を県全体で算定し、市町村毎の納付金を決定します。市町村は、県への納付金を賄うために必要な額を保険料として集めることとなることから、この納付金が市町村の決定する保険料に影響を及ぼす場合があります。このため、国のガイドラインでは、急激な保険料の上昇となることがないよう、国費や県費を活用して、市町村の負担を緩和することとされております。
現在、県では、負担緩和のあり方を含めた国保の運営方針について、「福岡県国保運営協議会」に諮問し、審議をお願いしているところであります。今後、同協議会の答申を受けて、年内を目途に県としての方針を決定してまいります。
山口律子 委員
県内の各市町村と被保険者の方々は年内といわず可能な限り早期に運営方針を決めていただきたいと願っています。
本県は当面は全県均一化の保険料の設定は県内市町村の医療費水準や所得格差から行わず各市町村ごとの保険料で出発し、中長期的には統一した保険料を目指す方向で県の国保運営協議会で審議されていると聞いています。いずれにしても国保の危機を打開し、持続可能な保険制度にするためには国庫支出金の増額が不可欠だと思います。国庫負担の割合は、制度発足当時は医療費の45%と定めていましたが、1984年から国庫負担率は低下し続け現在は23%程度にしか過ぎません。全国知事会は国との協議の中で協会けんぽ並みの保険料にするには1兆円の国費の追加投入が必要と主張しました。
国費増額に関する県の見解を伺います。
兵頭正俊 医療保険課長
先ほど委員も述べられたように、国保においては、平成26年度の本県データでは、65歳以上の高齢者の割合は35%を超えており、医療費水準が高くなる傾向にあります。一方、年金生活者等、無職世帯主の割合は、50%を超え(51.66%)、保険料収入が得にくいといった構造となっています。このため、今回の改革による公費の拡充があっても、今後の国保財政は厳しいものがあると認識しております。
県といたしましては、国において新制度移行後の運用状況を十分検証すること、そして地方と協議しながら、子どもに係る均等割保険料の軽減措置導入や国の定率負担の引上げなど様々な財政支援の対策を講じ、将来的な医療費の割嵩に耐え得る財政基盤の確立を図るよう、国に要望しているところでございます。
山口律子 委員
国民健康保険制度を持続可能な制度とするためには、国の財政支援が不可欠です。今後も全国知事会等に働きかけ、あらゆる機会を通じて国に強く要請していただきたいということを申し上げ私の質問を終わります。