● 19年07月05日 県議会報告

2019年7月5日 2019年予算特別委員会 高瀬菜穂子委員質疑・答弁 「福岡教育大学における教員養成について」「特別支援学校建設について」



2019年7月5日   6月定例会(予算特別委員会)高瀬菜穂子委員質疑(大要)

 

 

 

<福岡教育大学における教員養成について、特別支援学校建設について>

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

 日本共産党の高瀬菜穂子でございます。福岡教育大学における教員養成についてと特別支援学校の建設について伺います。

 福岡教育大学は本県の基幹的教員養成大学で、多くの卒業生が本県教育を支えています。この大学で、2016年度以降、小学校と中学校の免許が同時に取りにくいカリキュラム変更が行われており、西日本新聞の一面で「小中教員免許同時取得ダメ?」との見出しで、学生が「困っている」状況の報道がありました。記事には、教員養成課程を持つ国公立大学は計44校。文部科学省の担当者は「福教大のような取り組みは聞いたことがない」と記述されております。私自身も教員養成大学で学びましたが、その内容に違和感を持たざるを得ません。

 福教大はまた、2013年から14年にかけて行われたとされる学長による不当労働行為が、今年1月最高裁で確定したとも報道されております。「福教大はいったいどうなっているのか」と市民集会も開かれました。大学の自治は守られなければならないと承知をしておりますけれども、福教大の教育のあり方は、本県教育にも大きな影響があると考え質問をいたします。城戸教育長は、福教大の学長選考委員、経営協議会委員も務めておられます。福教大の教育のあり方は、本県教育に大きな影響があると考えますが見解を伺います。

 

 

松永一雄 教職員課長

 

 優秀な教員を育成し、人材を育成するという点でおきまして福岡教育大学など教員養成大学の役割は大きいと思っております。しかしながら福岡教育大学という個別の大学の教育カリキュラム、及び学内の事案に対しまして、県教育委員会としては、見解を述べる立場にはないと、見解を述べる立場にはございません。

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

 「県教育委員会としては、見解を述べる立場にない」とのことですが、しかしながら、大学の教育内容は、教員養成と直結しております。したがって本県教育に影響があることは間違いないと思います。新聞には、「小、中学校、両方の免許を取りたい。取れないのなら、入学前にきちんと説明してほしかった」「小学校といっしょに中学校の国語もとりたかったけれど、無理だといわれてあきらめました」との声が紹介されています。小学校課程の学生は、教科の専門性よりもクラスをまとめる力、地域や保護者との連携力を持つ教員が求められている」との考えから、教科を深める授業が少なく、そのため、中学校高校の免許がとりにくくなっていると聞きました。小学校から中学の免許を取るためにはあらかじめテストに合格する必要があり、その上必要な単位を取得することがカリキュラムの構成上困難となっているそうです。

 学生のアンケートには、「以前のようにさまざまな種類の免許を取得しやすいカリキュラムのほうが現代の教育にあっている」とか「カリキュラムがかわって、中学校免許がとりにくい。したい勉強ができない。」「選修制がなくなり、全教科に偏りなく知識をつけようとしたためか、どれも専門性に欠けていると思う。」との意見が多く見られます。また、教員採用率を上げるために、採用数の多い小学校免許のみの教員を増やすようにしているのではないか、との疑問や「学生の可能性をせばめないでほしい」などの声もありました。

 このように、カリキュラムの変更は学生の要望から行われたものではなく、また、導入に当たって教職員からは反対の声が大きかったということであります。トップダウンで免許を取りにくくするカリキュラム改定を行ったことに大変な違和感と疑問を感じるわけです。 

 福岡県は、教員採用試験において、英語の免許を取得している場合に1割加点としました。同様の採用試験は各地で見られます。そうしたなか、大分大学は、複数免許を卒業の要件にするとの報道もありました。小学校での英語教育が導入され、また、小学校での教科担任制も打ち出される中で、複数の免許取得を望む学生がいるのは当然ではないかと思いますし、なによりも子どもたちの学力保障のためには、教科の専門性は欠くことができません。大学が教員免許取得の幅をせばめていることについては、どう考えられますでしょうか。改善を求めるべきではないでしょうか。

 

 

松永一雄 教職員課長

 

 教員養成段階におきまして、例えば、小学校の免許に加えまして中学校の免許状取得することは、学校種間の接続を見通して指導する力、あるいは幅広い理解に基づいた総合的な指導力の向上につながるとも考えております。

 しかし一方で、特定の教科に偏らず、小学校教員として必要な資質・能力をバランスよく、確実に身に付けさせることは必要不可欠な重要な要素でもあると考えております。いずれにしましても個々の大学がどのようなカリキュラム編成するのか、あるいはどのような教育内容とするのかについては、大学が自主的、主体的に決定すべきものというふうに考えております。

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

 二つの方向から、両方ともの資質が必要だというお話だったというふうに思います。県内では、評価は別として、小中一貫校なども進められています。また、教員不足で臨時的な免許で対応している実態も広くあります。教科学習を深め、意欲ある学生の免許取得を保障するよう求めていただきたいと私は考えております。

 

 次の質問ですが、福教大では、2013年から14年にかけて、学長による労働組合に対する「不当労働行為」があり、問題となりました。組合員のビラ配布行為を非難し、これを理由に教授会から研究科長に選出された教授の任命を拒否するなど、組合員への差別的な取り扱いを行ったことが福岡県地方労働委員会に訴えられました。地労委でビラ配布は正当な組合活動、学長の発言およびウェブサイト掲載は組合員の組合活動を萎縮させ組合の弱体化をはかるものなどとして救済命令が下りました。しかし学長側は受け入れず、中央労働委員会でも争われ、やはり救済命令が下されました。その後、これを引き継いだ新学長は中労委決定を不服として、行政訴訟を提起し、地裁、高裁でも敗訴、さらに今年1月29日、最高裁判所は、学長側の上告を棄却しました。不当労働行為と人権侵害行為という法令違反が5回も認定されたことになります。この間、5年にもわたって、この問題は解決できないままでした。最高裁での不当労働行為認定がされても、学長側は謝罪もしていないとのことです。

 国立大学法人法で、学長は「人格が高潔で、学識が優れ、かつ大学における教育研究活動を適切かつ効果的に運営することができる能力を有する者のうちから」選考されるとありますが、人権侵害と不当労働行為を行う人物が人権教育を行う教員養成大学の学長として、その後は副学長として経営トップにい続けたことに驚きを隠せません。カリキュラムの改定、学部の改組も、トップダウンで行われ、突然、公式記録を取ることの出来る50メートルプールを25メートルに埋め立てるなどということまで起こっています。小学校のプールは25メートルだからというのが理由だそうです。とても民主的とはいえない運営ではないでしょうか。大学の自治が脅かされているともいえるのではないかと思います。これは、1大学の問題ではなく、本県教育にも関わる問題であると考えます。最高裁が認定した「不当労働行為」が県内教員養成大学で起こったことについてのご所見を伺います。また、教育長は学長選考委員、経営協議会委員として、ものを言う立場にあったと思いますが、どのような対応をしてこられたのか、また県教委として、大学と意見交換をするなどの機会はなかったのか、県教委としての対応も明らかにしてください。

 

 

松永一雄 教職員課長

 

 不当労働行為はあってはならないものであります。しかし、福岡教育大学における事案につきまして県教育委員会としては事実、詳細を承知しておりませんで、意見を述べることは困難でございます。

 また個別具体の大学運営に対しても対応する立場にないと考えております。

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

 ご答弁にありましたように不当労働行為はあってはならないと思います。特に教員養成大学ではそうだと思います。

 今「福岡教育大学の正常化を求める署名」というものが取り組まれており、過半数の教員の皆さんが署名をされたということです。求めているのは、①不当労働行為のため、物心両面で損失を被った、教授、教授会、教職員組合等への前学長、現学長による直接謝罪、②九州の基幹教育大学としての社会的・道義的責任を社会に示すため、本県に係る責任の所在を明確にし、大学執行部の刷新を行うこと、③東京地裁、高裁の判決内容が示すことを真摯に受け止め、労使対等の対話のある、民主的な大学運営体制を構築すること、であります。当然の要求ではないかと思います。県としても大学の正常化のために、働きかけていただきたいと考えますが、どうでしょうか。

 

 

松永一雄 教職員課長

 

 個別の大学内の労使関係、あるいは具体の組織体制につきまして、教育委員会に指導権限はなく、大学の自主性・自律性の観点からも働きかけを行うことは困難であるというふうに思っております。

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

 県としての動きはなかなか出来ないということですよね。しかしこの大学の今のあり方というのは、ほんとに心配なところがあります。安倍政権は学長の権限を強化する法改正を行いましたがリーダーシップが独裁につながる危険性を本県は示していると思います。

 2013年(平成25年)11月19日の「中央教育審議会の組織運営部会」において「大学のガバナンス改革の在り方に関する議論」がされています。そのなかで、ある委員から「学長のリーダーシップを強くすると大学がよくなるという保証はないと思っております。(中略)小さな大学で学長がワンマンで間違ったときに非常に悲惨な結果になることがございます。これ以上権限を強めるような法令改正をすることは非常に危険性を招く可能性もある。いわゆる学長の暴走、暴走を止めるガバナンスがなくなるということなのです。」との意見が出されています。また、他の委員からは「学長が権限を持つと暴走するリスクがあるとした上で、学長選考委員会がこの学長はおかしい、暴走に限らず他の運営についてもおかしいと思ったら、罷免することができるということが防波堤になっている」ということも述べています。学長に権限を集中する大学法人法の危険性が議論され、その防波堤は学長選考委員会だと指摘をしています。そうであるならば、選考委員になっている城戸教育長の責任は重大であります。県教育長としてではなく、1有識者として選考委員になっており、県教育長としての本議会の答弁は難しいとのことでしたが、その責任の重大性について、厳しく指摘をしておきます。

 

 次に、特別支援学校建設問題について伺います。福岡教育大学の敷地内に県立特別支援学校を建設する計画が発表されました。県立特別支援学校の増設は、わが党も求めてきたことであり、歓迎するものですが、今回の建設については、県立学校であるにも関わらず、地元自治体が造成に係る費用を負担すると聞いています。大変驚いているのですが、県立特別支援学校なのですから、当然、県がすべて負担すべきではないでしょうか。見解を伺います。

 

 

井手優二 特別支援教育課長

 

 今回の誘致を受けての学校設置は、県として、概ね令和7年度までに福岡地区に3校新設するという喫緊の課題を抱えている中、学校の設置場所に相応しい土地を用意いただくものでありまして、特別支援教育の充実に向けた地元自治体と県双方の思いが合致した上に成り立ったものでございます。

 地元自治体が土地を用意するために、どのような負担をするかは、これは自治体において自主的に判断されるものでございまして、県が学校設置の条件にしたり、強制したりしているものではありませんので、問題はないものと考えております。

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

 「問題はない」との認識のようですが、地元の議会議事録を見ますと、「どうすれば誘致できるか」などの議論がされており、誘致に当たって地元自治体が負担をするとなれば、財政力のある自治体が有利ともみられかねません。県は県全体を俯瞰して、必要な場所、最適な場所を選定すべきで、自治体間の公平性を保つためにも、県が費用負担をすべきだと考えます。糸島でも同様のことが起こっているとのことですが、こうしたやり方は改めるべきだということを強調しておきます。

 また、今回PFI手法の検討を行っていると聞きました。県の方針によるものとのことですが、公教育の学校建設及び施設管理にPFI 手法はなじまないと考えます。全国で学校建設をPFIで行った事例はありますか。特別支援学校についてはどうでしょうか。あわせて、PFI検証にかかる費用はどのくらいと見込んでいますか、お答えください。

 

 

池松峰男 施設課長

 

 平成11年のいわゆるPFI法施行から昨年度までの20年間にPFIにより事業化された校舎等の学校施設整備事業は、全国で47事業ございますが、特別支援学校で事業化された例はありません。

 またPFI導入可能性調査につきましては、2校で1500万円程度見込んでおります。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 PFI推進の方針が2017年に出されてから、県全体で検証対象になったのはこの2つの特別支援学校を含め6件ということで、PFI手法の採用による建設はまだないとのことでした。どうしても利益を出すためのコストカットが必要となるPFIは、公教育、特に特別な配慮を要する特別支援学校には馴染まないと考えます。その点もぜひ、考慮していただきたいと思います。1500万といえば、検証だけでもかなりのお金がかかりますので改善を求めたいなと思います。

 

 最後に、本日私が提起をしました福岡教育大学の一連の問題について、副教育長にご所見を伺いたいと思います。大学の問題ではありますけれども、本県教育に重大な影響があるとの立場から問題提起させていただきました。よろしくお願いいたします。

 

 

吉田法稔 副教育長

 

 学校現場における様々な課題に対応していくためには、幅広い視野を持って、そして実践的指導力のある人材を確保するとそういうことが必要でございまして、そのためには養成機関である大学との連携は重要なことでございます。

 このため、福岡教育大学に限らず、教員養成を行う大学に対しましては、本県の求める教師像について説明に努めてきたところでございます。

 ただし、先ほどから申し上げておりますように、個別の大学内の事案につきましては、指揮監督関係もなく、また、大学の自主性・自律性の尊重という観点からも、感想を申し述べることは差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

 

高瀬菜穂子 委員

 

 お答えいただいきましたが、教育委員会として教員養成大学との連携はいずれにしても重要だと思います。大学の自主性・自律性を尊重しつつ注視していただくよう要望しまして、質問を終わります。

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