● 19年10月09日 県議会報告
2019年10月9日 2019年決算特別委員会・総括質疑 高瀬菜穂子委員質疑・答弁 「建設労働者の処遇改善、公契約条例について」
<2019年決算特別委員会・総括質疑>
2019年10月9日
建設労働者の処遇改善と公契約条例について(大要)
高瀬菜穂子 委員
日本共産党の高瀬菜穂子です。「建設労働者の処遇改善と公契約条例」について質問いたします。県では、いわゆる「建設職人基本法」に基づき、「福岡県における建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する計画」を本年3月に策定されました。建設工事従事者の安全と健康の確保に関する施策を総合的・計画的に推進し、建設業の健全な発展を図るのが目的です。建設労働者の安全と健康の確保のために最も望まれるのは、賃金の確保ではないでしょうか。国は、建設労働者の設計労務単価を7年連続で引き上げ、7年前と比較しても48%引き上げられました。全国全職種加重平均は19,392円となりました。そして、国土交通省・建設産業局は「技能労働者への適切な賃金水準の確保について」という通知を、各都道府県知事・各政令指定都市市長と建設業団体の長に宛てて発出しています。このことについて、県はどのように受け止めておられますか。建設労働者の賃金確保についての見解をお示しください。
中村博文 建築都市総務課契約室長
委員のご指摘のとおり、今年の二月に国土交通省から都道府県に通知がございました。
その通知は、新労務単価の早期活用など適切な賃金水準の確保を促し、技能労働者の処遇改善を図るよう要請があっております。県といたしましても、技能労働者の確保・育成するためには、適切な水準の確保等による処遇改善が重要だというふうに考えております。
高瀬菜穂子 委員
賃金確保は大変重要だというご答弁でした。国の調査では、建設労働者の賃金は昨年までの6年間で18%あがったとのことです。「毎月勤労統計調査地方調査年報」によると、この伸びは、全産業の中でも突出しています。今実質賃金が全体として下がっている中ですので非常に突出しているわけです。設計労務単価の伸びが、賃金に影響を及ぼしたと考えますけれども、この点については見解はどうでしょうか。
中村博文 建築都市総務課契約室長
国は、毎年、全国の公共工事従事者の賃金の実態を調査しておりまして、設計労務単価をこれにより改訂しております。
本県においても、この改定された労務単価を速やかに適用することによりまして賃金の上昇に影響があったものと考えております。
高瀬菜穂子 委員
国が政策的に設計労務単価を引き上げたことが、賃金に影響を与えていることは間違いないと思います。しかし、2012年から上がり始め、7年間で48%も設計労務単価は上がりましたが、賃金への反映は、18%ですから、そこには大きな乖離があります。
先日、国交省にこの問題で要請をしたとき、国交省の担当者は「労務単価の上昇については、現場の技能労働者の賃金水準の上昇という好循環につなげるために、引き上げの効果が技能労働者一人ひとりにまで着実に行き渡ることは重要であると考えており、官民一体となって取り組みを進めてきている」とお答えになりました。そして、一人ひとりに行き渡るための努力として、国は、繰り返し建設関係団体に賃金の水準の確保を要請しています。この8月にも大臣と建設4団体との意見交換会を行ったということです。業界の方でも、たとえば建設産業団体連合会では、技能経験に見合って給与の引き上げなどを決議、日本建設連合会では、下請け業者の見積もりを尊重する「労務費見積もり尊重宣言」が行われ、全国建設業協会においては、労務単価改定分を下請け契約に反映する「単価引き上げ分アップ宣言」が行われるなど、自主的な取り組みも出てきているというふうに報告をされました。
国交省の直轄工事においては、日建連の「労務費見積もり尊重宣言」を踏まえて、労務費の内訳を明示した見積書を尊重する優れた企業に、インセンティブを付与するモデル工事を試行することにしたとのことでした。県としても賃金確保のためになんらかの取り組みを行うべきではないでしょうか。国にならい、賃金引上げの呼びかけを業界に対して行い、独自のインセンティブ付与などの取り組みを行ってはどうかと考えますが、いかがですか。
中村博文 建築都市総務課契約室長
県では、受注業者に対しまして、下請契約を締結する際に、法定福利費を含んだ適切な価格で契約をするよう要請をしておりまして、受注業者・下請業者の社会保険等の加入状況を確認いたしております。
また、下請業者による設計労務単価の引き上げを踏まえた、適切な水準の賃金の支払いについてこれも受注業者に対して要請を行ってるところでございます。
さらに、建設業団体に対しても、意見交換会など様々な機会を捉えてまして同様な要請を行っております。こうした取り組みを引き続き実施していきたいというふうに考えております。
高瀬菜穂子 委員
建設業界に対して要請をしていくとのことです。県は、受注業者、今言われたように受注業者つまり元請業者に対する要請を主に行っているんですね。下請け業者の賃金等については直接調査などを行っておられないと思います。
県内の下請けで働く技能労働者の賃金が実際にはどうなっているか、ということについて、ぜひつかんでいただきたいと思うわけです。福岡県建設労働組合が行った賃金アンケートによりますと1人親方・職人さん1,542人、事業主578人分のアンケートが集約をされておりますけれども、1人親方・職人さんの常用賃金は平均で14,390円です。月給制の平均で281,600円、昨年の年収は平均で368万円でした。1年間で日当は上がったかという問いに対して、「上がった」と答えた方が168人に対し「変わらない」が1,190人です。事業主に対する常用職人への日当はどうかという問いに対して、平均は13,945円でしかなく、「法定福利費を請求していますか」という問いに対して、「請求している」と答えた事業者が、事業主が106、「請求していない」と答えた事業主さんが451にも上ります。
設計労務単価は、加重平均で19,000円を超えています。国は、技能労働者の年収を500万円以上にするとの目標を立てていますが、本県の実態は、これとはかけ離れているといわなければなりません。
国は、今年の公共事業の労務費調査で、下請け契約における法定福利費の明示状況を把握する調査項目を新たに追加するとのことです。調査にあたっては、1工事1,000万円以上の工事から抽出をし、各元請け、下請け含めて10月時点の賃金を提出、工事に携わった労働者すべて直接面談方式で確認をするとのことでした。福岡県の調査には県も同席をすると聞いております。現状がどうなっているかを、まずは把握し、一人一人の技能労働者の賃金確保に向けて国と一体となって取り組んでいただきたい。これまでと同じ元請けに対する要請だけでは不十分だということを指摘したいと思います。
さて、建設労働者を含む公務における賃金確保のために、公契約条例が各地で作られておりましてこれが大変な効果を発揮していると思っております。県内では直方市が先進的に取り組んで、現在は、5,000万円以上の工事については、これを適用させています。賃金は設計労務単価の8割を確保するようになっています。末端の労働者に至るまで設計労務単価の8割が確保されているかどうか、元請けがきちんとチェックをしているんですよね。この条例は、市と建設業界、労働者の3者が協議を重ねる中でつくられ、建設労働者の後継を作るためにも有効と、業界団体からも喜ばれていると聞いています。まさに、「三方よし」の制度だということなんです。先日、直方市からお話を伺いましたが、担当者はこの制度を高く評価し、「ぜひともこれを周りの自治体にも広げてもらいたいと考えている。工事を5,000万円以下に拡大することや設計労務単価の8割以上の確保をめざしたいが、財政規模も考えて今の制度にしている。周囲の自治体にも広がれば、建設労働者を地元で増やしていくことにつながると思う」「災害の際にはやはり地元で建設労働者がいるということが大事だ」ということもおっしゃっていました。賃金の確保に公契約条例は大きな役割を果たしていると考えますけれども、県としてはこの制度どのように評価されますか。県として、公契約条例を作ることについての見解を伺います。
上村有輝 労働局労働政策課長
公契約条例につきましては、平成26年度から毎年町内勉強会を開催しまして、公契約条例に係る国や他の自治体の動向等について関係各課と情報共有等を行ってきたところでございます。
公契約条例の制定に当たりましては、労使が賃金を自主決定する原則や、労働条件の最低基準を定めた最低賃金法や労働基準法といった法令との関係をどのように整理するかなど慎重に検討すべき課題がございます。
また、労使双方からのご意見を伺う中で、賃金については本来労使間で自主的に決定されるべきものであること、また県が最低賃金を上回る基準を設けることについては慎重に検討すべきであること、といったご意見をいただいたところでございます。
このような状況から、現時点では公契約条例の制定は困難と考えております。
高瀬菜穂子 委員
直方市の公契約条例については言及されませんでしたが、現時点では公契約条例の制定には困難ということでした。賃金は、最低賃金法と労使間の合意で決定されるべきものとのご答弁ですけれども、それでは、技能労働者がいなくなってしまうそのままにしていてはそういう危機感からどんどん賃金が下がったというその中で建設労働者がいなくなるって危機感から設計労務単価の引き上げなど、さまざまな取り組みが今行われているんじゃないでしょうか。労使の合意といいますが、圧倒的に力関係が違う中で、実際、法定福利費さえも請求できていないというのが現状です。
税金を使う公共事業において、技能労働者の賃金を保障するシステムをつくり、そのことで技能労働者を養成していくという公契約条例は大変優れたものと考えます。そのため、全国に少しずつ広がり始め、現在53自治体(7県、46市区町)に広がっています。理念条例のところもありますけれども直方市のようなところもあります。このほかに、条例ではないけれども、指導要綱で賃金などの改善をすすめる自治体が1県、さらに4区12市において公契約市場に関連する賃金などの労働条件や公契約案件遂行の改善策を進めようと試みているところもあります。合わせれば70自治体に及びます。
該当しないと、政府の答弁書でも明らかになっております。
私は、直方市でできていることは、県においても実現可能であるというふうに考えます。ぜひ、実現の方向を探る立場で検討をしていただきたいとこのことをお願いしたいと思います。
次に、建設労働者のスキルを評価し処遇に反映させる仕組みとして、国が導入しました「キャリアアップシステム」について伺います。国交省は、5年後に全ての建設職人、330万人の登録をめざすとしていますが、これは、どのような制度で本県での取り組みはどうなっているでしょうか。今後の具体的な計画についてもご説明ください。
大藪和博 建築指導課長
本年4月から国が導入しました建設キャリアアップシステムは、建設工事従事者の処遇改善及び地位向上を図るため、技能者の資格や経験を業界統一のルールでシステムに登録・蓄積・評価することにより、技能者が有する能力や経験に応じた適正な評価や処遇が受けられる環境の整備を進めようとする取り組みでございます。
本県では、その普及を図るため、県や建設業団体で構成する会議や建設業団体の各種会議など様々な機会を捉えて周知をしております。本県の登録状況でございますが、本年8月時点におきまして技能者につきましては3,656人、また事業者につきましては713社となっております。
今後の取り組みとしましては、引き続きシステムの周知を行いますとともに、そのシステムに登録した事業者につきましては、来年5月からの建設工事入札参加資格者名簿の格付けをする際に加点をすることにより、更なる普及・促進を図ってまいります。
高瀬菜穂子 委員
ご答弁をいただきました。この制度は、登録者にカードが渡され、そのカードに技術歴や経験等も入力され、ひと目で経歴がわかるというシステムだということです。経験に応じてカードも段々とレベルアップしていくというふうに聞いております。
周知・普及に努めているとのことですので、ぜひ強力に進めていただきたいと思います。先日、建設現場を視察させていただいたんですが、「キャリアアップシステム」という言葉自体もまだ知られていないというふうに感じました。建退共推進の折に、ポスター掲示やチラシなど様々な広報を行っていただきましたけれども、今回もそうした取り組みが必要ではないかというふうに思います。検討をお願いいたします。
最後ですが、建設アスベスト対策についてお尋ねします。建設労働者のみならず、建設アスベストの対策は全ての住民にも重大な影響があります。このような中、県では建設資材にアスベストが含まれているか、現場で即座に確認できる装置である「アスベストアナライザー」を購入されたと聞き、大変喜んでおります。建設労働者の健康を守るためにも、適正に活用していただきたいと思います。県では、今回購入されたアスベストアナライザーをどのように活用していかれる方針か、説明をお願いします。
野中正浩 環境保全課長
アスベストアナライザーでございますが、建築資材に数秒間、近赤外線を照射することによりまして、アスベストが一定の割合以上含まれていることを現場で確認できる装置で、本年度購入いたしました。
この装置の活用方針でございますが、地震などの自然災害により建築物が被災した際に、飛散性の高いアスベストが使用されている可能性がある建築物の現場で測定を行い、アスベストが確認された場合、立入禁止等の措置を建築物の所有者等に求めてまいります。
また、平常時におきましても、県民の方々から、解体中の建築物についてアスベストが存在する可能性を懸念する問い合わせがあった場合などに活用してまいります。
このような取り組みによりまして、アスベストによる健康リスクの軽減につなげてまいりたいと考えております。
高瀬菜穂子 委員
ぜひ建設労働者の健康を守るためにも活用していただきたいというふうに思います。
以上、建設労働者の処遇改善について質問させていただきました。国も建設業界も危機感を持っている建設労働者の確保について県としても各課協力して進めていただきますように重ねてお願いを申し上げまして質問を終わります。ありがとうございました。