● 20年10月05日 県議会報告
2020年10月5日 2020年決算特別委員会 高瀬菜穂子委員質疑・答弁 「豪雨等を踏まえたため池対策について」(大要)
<2020年決算特別委員会>
2020年10月5日
豪雨等を踏まえた今後のため池対策について(大要)
高瀬菜穂子 委員
日本共産党の高瀬菜穂子です。
豪雨等を踏まえた今後のため池対策について伺います。ため池は全国に16万箇所存在するといわれております。平成30年7月豪雨において多くのため池が被災したことを受け、国は防災重点ため池の再選定を行うとともに、避難行動につなげる対策と施設機能の適切な維持補強に向けた対策を推進、本年度予算でため池の緊急対策も実施しています。まず、農業用ため池、防災重点ため池について、簡潔にご説明いただきますとともに、それぞれの数を明らかにしてください。防災重点ため池の選定基準の見直しでその数がどのように変化したか、したということについてもお答えください。
柳田栄一 農村森林整備課長
まず農業用ため池とは、「農業用水を貯留する目的で造られたものであり、農業者が利用する施設」でございます。本県には、昨年度末時点で4,808箇所ありまして、全国で8番目の数となっております。
次に、防災重点ため池とは、「決壊した場合の浸水区域に家屋や公共施設等が存在し、人的被害を与えるおそれのあるため池」でございます。本県には、昨年度末時点で3,578箇所ありまして全国で5番目となっております。先ほど先生の申しました通り、農林水産省は、新たな選定基準を30年11月に定めました。これを受けまして、防災重点ため池は、見直し前は80箇所でしたが、市町村と連携し見直した結果、先ほど申しました3,578箇所となったところです。
高瀬菜穂子 委員
本県の農業用ため池は、4,808箇所で全国8番目に高いと、防災重点ため池は3,578箇所で、農業用ため池に占める割合は全国でも高いと、数で言うと5番目ということでしたね。決壊した場合に人的被害を与える恐れのあるため池が多いというのが本県の特徴でもあると思います。選定基準の見直しで80箇所だったものが3,578箇所に増えたというのはかなり衝撃の数字でもあります。ため池の治水対策というのは、本県においてとりわけ重要な課題であるというふうに考えます。
国も、決壊による災害を防止するため「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」を施行し、所有者等による都道府県への届け出の義務付け、データベースの整備公表、所有者等による適正管理の努力義務などを定めました。また、浸水想定区域図を作成して、市町村に提供しハザードマップを作成すること、水位計や監視カメラの設置なども取り組まれていると思います。これら施策の進捗状況についてお答えください。
柳田栄一 農村森林整備課長
届出状況でございます。本県には県への届け出を必要とするため池は2,083箇所あり、これまでに2,011箇所について届け出がなされたところです。この届け出された所有者や所在地といった情報などを基に、データベースの整備を行い、既に公表しているところです。
次にハザードマップの作成状況でございます。県におきまして、ため池が決壊した場合を想定した「浸水想定区域図」を昨年度までに全ての防災重点ため池で作成しまして、これを市町村へ提供したところです。
市町村は、この浸水想定区域図をもとに、ハザードマップの作成を順次進めておりまして、昨年度末時点で174箇所を作成しております。
また豪雨時にため池の管理者や市町村職員が現地に行かずに状況をリアルタイムで把握できる水位計や監視カメラについては、市町村が昨年度までに9箇所設置しまして、本年度は、40箇所を設置する予定でございます。
高瀬菜穂子 委員
すでにデータベースはつくられていると、「浸水想定区域図」をすべての防災重点ため池で作成されているということですので、今後、市町村においてハザードマップが作られ、周辺住民に情報が行き届くようにしていただきたいというふうに思います。ため池の届け出対象2,083箇所に対して、届け出済は2,011箇所ということです。民間のため池の中には所有者がはっきりしないものもあるかと思いますけれども、届け出がされていないため池については、今後どのように取り組まれるおつもりでしょうか。
柳田栄一 農村森林整備課長
届け出されていない72箇所については、現在、市町村と連携し、所有者、管理者の確認を進めるとともに、届け出を促しているところでございます。
高瀬菜穂子 委員
私の地元の北九州でも、所有者が明確でない「人民共有」などとなっているため池がありまして、その管理が問題になっているところもあります。そのような場合、自治体が管理者となることも必要ではないかというふうに思います。市町村と連携して、所有者・管理者の確認を急いでいただきたいと思います。
さて、農業用ため池は、現在でも洪水調整機能を果たしているということは言えると思います。2006年に九大のグループで「御笠川流域の治水強化策」という研究をされて論文にまとめられているんですけれども、この論文を読みますとですね、御笠川流域の2基の洪水調節ダムと121基のため池の治水効果を分析されていまして、ため池全体でダムの86%の治水効果を有しているというふうにしています。さらにため池のかさ上げなどのハード面、貯水率を変化させるソフト面などで強化を行えば、洪水調節ダムと同等の治水効果を有するというふうにしていまして、特に都市部においては、ため池の洪水調節機能の有効活用が望まれると結論づけています。ため池を治水に有効に活用するということは重要な課題だというふうに思います。
今、ダムについては、事前放流などが取り組まれておりますが、その過程で治水協定書が作られたりしています。ため池を活用した治水については、どのような取り組みがされているのかお答えください。
柳田栄一 農村森林整備課長
県では梅雨期や台風期などの大雨が予想される前に、市町村を通じ、農業者の理解を得ながら、ため池の事前放流や低水管理を促す取組みを行ってきております。
高瀬菜穂子 委員
事前放流や低水管理を行っていると、水位を下げるっていうことですね。それは効果がある取り組みだというふうに思いますので、その取り組み広がるようにお願いしたいと思います。
福岡市の樋井川水系この整備方針には農業用ため池による治水対策が位置付けられています。この地域は早くから市民会議が提言を発表するなど治水に高い関心のある地域でもあります。都市部では、農業用としての利用がなくなったため池も存在していると思います。こうしたため池の活用は、流域治水の重要な柱であるというふうに思います。河川とともにため池を流域治水に活用することについての見解を伺います。また、取り組みがあれば、教えていただきたいと思います。
柳田栄一 農村森林整備課長
水田の宅地化などの影響により、農業用としての利用がなくなったため池については、地域の洪水を抑制するため、調整池としての利用も可能と考えられます。
これまでにも複数の市町村において、農業用ため池であったものを市町村が関係者と調整をし、調整池としての利用を行っている事例がございます。
高瀬菜穂子 委員
すでに、調整池としての利用を行っているところもあると、転用するということが可能だということだと思いますので、その条件のあるところ、特に都市部ではですね、県土整備、河川管理の部と一緒になってですね、流域治水という観点からこの転用も含めた対策というのを進めていただきたいと思います。豪雨災害を受けて、各地でため池を活用した治水対策が行われ、インターネットではですね、調べますと様々な取り組み事例がアップされておりまして、私も勉強になりました。最もため池が多い兵庫県ですけれども、ため池治水プロジェクトが展開されておりまして、3000㎥以上の雨水貯水容量を確保するため池については、1か所当たり、9月、10月の2か月で7万円を3年間支給すると、円滑な管理を促進するためというふうなことでこういう制度を作っているんですが、管理者に対するこうした取組みというのは、有効じゃないかというふうに思いました。本県でも進めてみてはどうかと考えますけれども、見解を伺います。
柳田栄一 農村森林整備課長
水田に農業用水が必要となる6月から8月の時期のため池を活用した治水対策は、農業者の理解を得ることは非常に難しいと考えてます。
県では、ため池管理に携わる農業者や市町村職員に、ため池の機能が発揮できるよう日常の管理・点検に必要な知識や技術こういったものを習得していただくことが重要であると考え、今年度、「ため池管理保全支援センター」を設置しまして、管理者からの日常管理に関する相談へ対応や、管理の状況を確認し、適切な助言・指導、また日常管理や点検、工事上の留意点などを学ぶ研修会などに取組んでいるところです。
高瀬菜穂子 委員
様々な取組みを本県でも展開されているということであります。6月から8月というのは農業用水が必要な時期だと思いますが、その後の台風の時期とかですね、年間を通してどのようにため池を使っていくかということについては、さまざま工夫もしていただきたいと思います。ため池を活用した利水・治水両面にわたる取り組みが全国で展開されていくと思いますので、効果的な施策については是非、本県でも取り入れて進めていただきたいと、河川管理と協働してのため池の治水利用の推進をお願いいたしまして質問を終わります。