● 21年03月12日 県議会報告

2021年3月12日 2021年予算特別委員会 高瀬菜穂子委員 質疑・答弁「 地域交通対策について」(大要)



2021年3月12日   2月定例会(予算特別委員会)高瀬菜穂子委員質疑(大要)

 

 

 

<地域交通対策について>

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

 日本共産党の高瀬菜穂子でございます。地域交通対策について、昨年9月の一般質問に続いて伺います。2002年の道路運送法の規制緩和でバス路線の参入撤退が許可制から届け出制になり、県内のバス路線は大幅に削減されました。道路運送法が改正された2002年から昨年9月までに、路線の全部または一部が廃止されたのは263路線、その距離は1,769キロメートルにも上るとのことでした。そんな中で、県民の交通権、移動の権利、が脅かされています。各市町村は、移動の足を確保するため、コミュニティバスやデマンド交通など様々工夫を凝らしており、県もこうした事業に一定の補助を行ってきたわけですが、その額の少なさ、要件の厳しさから改善の要望が出されておりました。

 新年度、地域住民の移動手段の確保・維持に取り組む市町村に対し、地域の実情に応じたコミュニティバスの支援制度を構築するとして、新規事業を立ち上げておられますが、新規事業について、これまでとの違いも分かるように簡潔に説明をお願いします。

 

 

片山潔 交通政策課長

 

 来年度から、新たに、市町村がコミュニティバスを導入する際、最適な運行ルートの設定、持続可能な運行形態の選択を行うための実証運行に対する支援や、コミュニティバスと鉄道・路線バス・タクシーなど他の交通機関との乗り継ぎ強化による利便性の向上の取組みに対する支援を行うこととしております。

 またコミュニケーションバス運行経費に対する支援につきましては、これまで収支率25%以上の路線に対し補助をしてきたところを、その要件を引き下げまして収支率20%以上に緩和するとともに、利用者が限られるデマンド交通に対しては、収支率ではなく、乗合率を要件として補助することとしています。

 補助率についても、これまで収支率に応じて、8%から20%としていたところ、一律20%へ見直すこととしております。

 これら新規事業と、既存の車両購入費等の補助を合わせまして、令和3年度当初予算で1億5千万円余をお願いいたしております。

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

 ご説明ありがとうございます。これまで、収支率によって補助率が細かく決められていました。収支率25%以上の路線でなければ補助の対象にならず、収支率が50%以上でなければ、最高の20%の補助は受けられなかったわけです。しかし、もともと収益が上がらない路線であったために廃止されたわけですから、50%の収支を上げるのは容易なことではありません。今回の見直しで、収支率20%以上の路線に対して一律に20%補助とし、デマンド交通についても、1便に対し1.5人以上乗っていれば、20%補助としたことは、使いやすい制度に改善されたというふうに思います。

 新年度予算は1億5千万円余とのご答弁でしたが、市町村運営のコミバスに対する補助制度について、直近5年間の実績はどうなっているでしょうか。そのうち、収支率50%以上のコミバスはどの程度あったのかも明らかにしてください。

 

 

片山潔 交通政策課長

 

 市町村のコミュニティバス運行経費に対する「生活交通確保対策補助金」過去の5年間の実績でございますが、平成27年度は6千9百万円余、平成28年度・29年度はそれぞれ7千2百万円余、平成30年度は8千万円余、そして令和元年度は1億2百万円余、と年々増加をしているとこでございます。

 また、補助したコミュニティバスのうち、収支率50%以上の路線につきましては、平成27年度・28年度はいずれも5路線、平成29年度は3路線、平成30年度は2路線、令和元年度は1路線となっております。

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

 予算は毎年増えているけれども、50%以上の収支率の路線は1路線にまで減ったということです。今回の改定は、市町村の実情にもあったもので、今回の要件緩和によって、活用が増加すると考えます。今後の見込みについてどう考えておられますか。活用が増えた場合には予算を増額すると考えてよろしいでしょうか。このような補助制度を県単独事業で行っているわけですが、国の補助が必要ではないでしょうか。国に対して、強力に予算措置を求めるべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。

 

 

片山潔 交通政策課長

 

 只今の件につきましては、今回の補助要件の緩和などの新規事業につきましては、市町村との意見交換や見込み調査に基づきまして、必要な額の計上をお願いしているところでございます。

 県・市町村共に生活交通確保のための財政負担は年々増加しておりまして、国に対しては、毎年の予算要望において、そしてまた、全国知事会を通じて、必要な予算の確保、そして地域の実情に応じた補助制度の見直しなどを行うよう強く要望いたしております。

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

 そもそも、道路運送法の規制緩和が、こうした事態を全国で招いているわけです。生活交通確保の予算は抜本的に増やす必要があると思います。県単独事業となっているコミバスやデマンド交通についても、国が予算措置を行うよう強く要望していただきたいと思います。

 私の地元の小倉南区では、西鉄バスが撤退した路線で、「お出かけ交通」が市民の足となっています。お出かけ交通利用促進の課題として、モノレールへの接続があります。西鉄バス路線が廃止となった合馬や道原からの「お出かけ交通」は、国道322号線までで、銀行や病院、買い物に行くには乗り換えなければなりません。西鉄が既設路線の乗り入れを認めないため、国道を通ってモノレールに接続するということが今も実現できていないからです。タケノコで有名な合馬、菅生の滝がある道原は、北九州の観光地ですが、公共交通では行きにくい場所になってしまいました。モノレール嵐山口駅から「お出かけ交通」に乗れるようになりますと、気軽に行楽に行けますし、地域住民にとっても利便性が大きく向上します。今回改正された「地域公共交通活性化法」で、「輸送資源の総動員による移動手段の確保」や、「既存の公共サービスの改善の徹底」などがうたわれていますが、地域の移動ニーズにきめ細かく対応できるメニューの充実にこうした要望も取り入れ、実現のための協力体制をつくっていただきたいと考えますが、見解を伺います。

 

 

片山潔 交通政策課長

 

 今回の法改正によりまして、「輸送資源の総動員による移動手段の確保」や「既存の公共交通サービスの改善の徹底」がうたわれたこと、このことを踏まえまして、来年度から、市町村のコミュニティバスの利用者が、鉄道・路線バス・タクシーなど、他の交通手段を円滑に乗り継いで移動いただけるよう、接続改善の取組みを支援していくことといたしております。

 本事業を活用して、市町村のコミュニティバスと他の交通機関の連携が進みますよう、コミュニティバス等を運行する市町村が設置し、地域内の住民代表や交通事業者等が生活交通確保について協議する場である「地域公共交通会議」におきまして、他の地域での優良先行事例を紹介するなど、必要な助言や情報提供に取り組んでまいります。

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

 是非、前向きに取り組んでいただきたいというふうに思います。

 今回の地域公共交通活性化法とともに道路運送法も改正され、自家用有償旅客運送が拡大されました。二種免許が義務付けられていない自家用有償運送の拡大はライドシェアへの突破口につながるのではないかと心配の声が上がっています。

 これまで自家用有償運送は、過疎地域でバス・タクシー事業者のいないところで限定的に行われてきました。今回の法改正で地域が広がる恐れがあり、観光客のニーズに応えるなら運送頻度も上がることが懸念されています。附帯決議にも「ライドシェアは引き続き導入を認めないこと」と明記されました。自家用有償運送は、安全性確保の面から、これまで通り限定的であるべきだと考えますが、県の見解を伺います。

 

 

片山潔 交通政策課長

 

 「自家用有償旅客運送」は、バスやタクシー事業者による輸送サービスが提供されず、交通手段が十分に確保されてない地域において、例外的に、市町村が自家用車を用いて有償で運送できる制度でありまして、県内では14の市町が本制度を活用し、貸切バス事業者などへ委託の上、コミュニティバスを運行いたしております。

 今回の道路運送法の改正により、「自家用有償旅客運送」の対象が、「地域住民に加え、観光客など当該地域への来訪者も含む」と明確化をされたところでございますが、国においては、制度の範囲は、あくまでバス・タクシーがない地域に限定されるものに変わりはないという見解が示されております。

 従前どおり、市町村が「自家用有償旅客運送」を導入する際には、先ほどふれました地域公共交通会議等におきまして、地域住民や交通事業者と協議を行い、合意を得ることが必要であり、法改正に伴い、直ちにその地域が拡大されるものではないというふうに認識をいたしております。

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

「直ちにその地域が拡大されるものではない」、これまでと変わらないとのご認識ですけれども、法律上拡大されていることを注視し、今後とも「バス・タクシーがない地域に限定される」という点が守られるように運用していただきたいと思います。よろしくお願いします。

 最後の質問です。西鉄バス筑豊が田川快速小倉線、後藤寺中谷間の路線廃止を決定しました。これに伴い、西鉄バス北九州が北九州市内のバス路線を新設し、香春町では、スクールバスなどの活用で足の確保を行うと聞いています。しかし、歴史的にバスによって緊密に結ばれてきたこの経済圏・文化圏が切れてしまうことに変わりはありません。これまでも再三申し上げてきましたように、基幹広域路線については県が責任をもって活性化策も含め取り組むべきであると考えます。これまで県は、広域路線確保のためにどのような取り組みを行ってきたのか、また、今後どのような取り組みを考えているのか、お伺いします。

 

 

片山潔 交通政策課長

 

 県では、県民の皆様の生活交通確保の観点から、国と連携し、複数市町村を運行する広域的・幹線的なバス路線を維持するため、運行経費や車両購入費に対する助成を行っております。

 また、コミュニティバスの広域運行路線の普及のため、平成30年度から、市町村域を超えて運行するコミュニティバスに対する補助率の上乗せを行ってまいりました。

 今後は、引き続き、広域的・幹線的なバス路線への助成に取り組むとともに、コミュニティバスに対しては、来年度から新設する補助制度を活用しまして、市町村をまたぐ広域的な実証運行や、鉄道・路線バスとの乗り継ぎを強化した市町村間移動の確保に取り組んでまいります。

 

 

高瀬菜穂子 委員

 

 コミュニティバスの広域運行も含め、検討がされたけれども、存続ができなかったということは本当に残念です。「金辺トンネルを歩いて行けというのか」との声もありました。今後、住民のニーズなどを調査し、市町村とともに、相互に乗り入れる、あるいは日田彦山線との連結などきめ細かな対応をおこなっていただきたいと思います。

 公共交通を研究する西村和記氏らが「クロスセクターベネフィット」により、公共交通の存在価値の試算を紹介しています。クロスセクターベネフィットとは、「ある部門で実施された施策が他の部門に利益、また節約をもたらす効果」で、逆に言えば、もしその施策を行わなければ他の部門に出費が発生する影響をもたらすということです。これを交通に当てはめれば、地域公共サービスが存在することにより、医療・福祉・まちづくり等の行政費用が節約される効果があるということです。公共交通がなくなることで、他のセクターで必要となる費用として、医療費の増大、タクシー券配布など新たな移送サービス、介護予防、高齢者ドライバーの安全教育、交通事故対応、災害時の移動手段の調達、土地の価値低下等による税収減少などが挙げられており、人口5万人程度のモデル地方都市で試算した結果、公共交通維持のために国・県・市で合計7,000万円を補助している一方、クロスセクターで生み出している便益は3億5,600万円に上るというものです。公共交通への補助は「赤字の穴埋め」ではなく、地域の持続性を維持するための投資と考えるべきであると指摘しています。

 こうした観点からも、広域路線の廃止は地域経済にも大きな影響を与えると考えるべきであり、その立場からの行政運営をお願いしたいと思います。

 最後に、多くの自治体で、バスやタクシー、JRなどに使える「高齢者福祉乗車券」の取り組みが行われています。すでに福岡市を含む13の政令市で実現しているこの制度を北九州市でも作ってほしい、と署名運動がおこり、市議会に提出されました。県内でも自治体によっては、タクシー券などを交付しているところもあります。高齢者福祉、地域活性化、移動権の保障の観点から、県としてこうした取り組みに対する補助制度をつくってはどうかと考えます。福岡県高齢者保健福祉計画にはこの課の生活交通確保対策補助金が位置づけられています。これを拡充する形でこうした補助制度、ぜひ検討していただきたいと、このことを強く要望しまして、質問を終わります。

<< >>

  • サイト内検索

    【検索はコチラ】
  • 痴漢アンケートバナー

  • 県議会ニュース

  • 赤嶺政賢

  • 田村 貴昭

  • 仁比そうへい

  • 真島省三

  • リンク集

  • お問い合せ