● 21年06月16日 県議会報告
2021年6月16日 2021年6月定例会 高瀬菜穂子議員 一般質問「教育委員選任について」「福岡東総合庁舎敷地有効活用事業について」「筑紫野市の「産興」処分場について」(大要)
2021年6月16日 6月定例会・高瀬菜穂子議員一般質問 答弁(大要)
<教育委員選任について>
高瀬菜穂子 議員
日本共産党の高瀬菜穂子です。通告に従い一般質問を行います。まず教育委員選任についてです。
知事は、先月下旬、県議を辞職したばかりの塩川氏を教育委員に選任する方針を発表されました。報道によれば、塩川元県議は辞職する前に、「県議を辞職してでも、教育委員として教育行政に貢献したい」との意向を教育長に伝え、「一身上の都合」で任期途中で辞職し、知事はその要望を丸呑みにしたことになります。塩川元県議は、批判を受け選任を辞退されましたが、知事はこれに対し、「大変残念」とのコメントを出され、教育の中立性に問題があったとの認識は全く見えません。
そもそも、教育委員会は、他の行政機関とは異なり、独立した機関として設置されており、教育行政は特定の政治勢力の影響を受けず、中立を保たなければならないとされています。先の戦争で、教育が政治利用され侵略戦争に突き進んだ反省の上に、日本国憲法の下で教育の中立性が謳われ、教育委員会を独立した機関とし、教育委員も当初は公選制で国民から直接選ばれていました。1956年に公選制が廃止されたのちも、教育の中立性・独立性については引き継がれました。安倍政権の下で、2015年に教育委員会制度が変えられ、「総合教育会議」が設置され、首長が教育施策の大綱を策定、教育長の任命権が首長に移されました。その際に、首長の関与が強くなりすぎることへの懸念、批判の声が各界から出されたことは周知のとおりです。
この度の教育委員選任における一連の経緯は、教育行政と首長、政治との関係に疑念を持たせるものであり、このようなことを繰り返してはならないと考えます。そこで、知事及び教育長に、この度の教育委員選任について、教育の中立性の観点から、現在どのような見解をお持ちか、伺います。
服部誠太郎 知事
教育委員の選任に関する見解について
ご答弁を申し上げます。教育委員の選任に関する見解についてでございます。
教育委員会は、多数決により意思決定を行う合議制の機関でございまして、これにより教育行政の方針が個人の価値判断に左右されず、中立性が確保される仕組みとなっております。
また、地方教育行政の、組織及び運営に関する法律では、教育長及び委員につきましては、その半数以上が同一政党に所属してはならないことや、政治的団体の役員となったり、積極的に政治運動をしてはならないことなどが規定をされております。
今回の教育委員候補の選任に当たりましては、こうした制度を踏まえました上で、教育長から、教育に関する優れた識見と教育への強い情熱を有する塩川秀敏氏が、候補としてふさわしいとの推薦を受けました。
また教育長からの推薦を受けた時点で、塩川氏はすでに議員を辞職されておりまして、法律で禁止される兼職にも当たりませんことから、塩川氏が本県の教育行政にご貢献をいただけるものと考え、同氏を教育委員候補として選任をしたものでございます。
吉田法稔 教育長
教育委員の選任に関する見解について
教育委員の選任に関する見解についてでございます。教育委員会は、人格が高潔で、教育、学術及び文化に関し識見を有し、年齢、性別、職業など多様な属性を持った複数の委員で構成される合議制の機関であり、その意思決定は多数決により行われます。
したがいまして、教育行政の方針が個人の考えや主張に左右されず、中立性が確保される制度となっております。
また、教育長及び委員につきましては、その半数以上が同一政党に所属してはならないことや、政治的団体の役員となったり、積極的に政治活動をしてはならないことなどが定められております。
この度は、こうした制度に則って、県立高等学校教員や地元の教育委員会委員を務めるなど、教育に関し優れた識見と強い情熱を有するとともに、福祉の分野でも大きな功績をあげてこられた塩川秀敏氏が教育委員候補として適任であると考え、知事に推薦をしたところでございます。
<福岡東総合庁舎敷地有効活用事業について>
高瀬菜穂子 議員
次に、福岡東総合庁舎敷地有効活用事業について伺います。この事業は、PPPの手法を用い、博多駅前の一等地を一般定期借地とし、借地期間70年で、JR九州、福岡地所株式会社、株式会社麻生の3社のJVが活用するものです。3社の提案は地上11階、地下1階のオフィスビルで、借地料は年間2億円に対し、博多県税事務所がこのビルに入ることで、賃借料、約1億2000万円を県が払うということです。この事業は、莫大な収益がみこめるものではないでしょうか。
そもそも県民サービスのために使うべき県民の財産を、民間の利益に貢献する形で70年にもわたって契約をするというのは、県民福祉の観点から問題があると考えます。どんな企業であっても70年間安定した経営が約束されているわけではありません。利便性の良い場所であれば、県民のさまざまなニーズに応えられるわけで、公共としての活用こそ望まれます。今、コロナ禍で、民間活用を進めてきた新自由主義的手法が見直されてもいます。知事は、このプロジェクトの選定委員会委員長として、かかわられましたが、今後、このような活用は見直すべきであると考えます。見解を伺います。
加えて、本事業に途中から協力企業に加わった「旭工務店」と「九鉄工業」について、県は「十分な実績・ノウハウ・スキル等を保有」と事業遂行能力を評価していますが、旭工務店はかつて社長以下3名が逮捕される事件を起こしており、九鉄工業は、福岡市東区の「傾斜マンション」を施工したJR九州の子会社です。これら企業の選定は適切とは言えないのではないでしょうか。知事の見解を伺います。
服部誠太郎 知事
民間企業への貸付による県有地の活用について
次に民間企業への貸付による県有地の活用についてでございます。
県民ニーズに叶った行政サービスを提供していくためには、持続可能で安定した財政運営をはかっていくことが重要でございます。このため県債残高の縮減や自主財源の確保などこれを目指します、財政改革プランを定めまして、全庁をあげて取り組んでおるところでございます。
その中で、県有地の貸付は、県民の皆様の財産を活用させていただくことにより、県民福祉の向上のため、まさに公共のために使う財源を生み出そうとするものでございます。
お尋ねの福岡東総合庁舎の敷地につきましては、JR博多駅に近く、県内でも有数の好立地に所在する貴重な土地であり、また、県の財政状況が厳しさを増します中、長期的・安定的な歳入を確保することや、今後のその同庁舎のですね、建替え、あるいは維持管理に要します費用の削減を図るという観点から、PPP事業を実施することといたしたところでございます。
本事業によりまして、70年にわたり、年2億2,200万円の地代収入が確保されます。また、庁舎の維持管理費や修繕・保全費が不要となり年7,300万円が節減されます。
新施設にあらためて入居いたします博多県税事務所の賃借料、年1億1,700万円を差し引きましても年1億7,800万円もの財政効果が生まれるわけでございます。
また、本事業によって、地域における民間の事業機会が創出され、地域の経済活性化に大きな効果を生み出すことに加えまして、バリアフリー対応をはじめとする最新の設備が整った施設に公共の機関でございます博多県税事務所が入居いたしますことによりまして、県民サービスの更なる向上が図られるものと考えております。
今後とも、民間活力を活用した県有財産の有効活用に努めてまいります。
協力業者について
協力業者についてお尋ねがございました。
本事業では、公募要項におきまして、協力業者の資格要件を、ひとつは一級建築士事務所登録がなされていること。また特定建設業許可を得ていること。あるいは宅地建物取引業の免許を受けていること。この3つのいずれかを満たすことと定めておるとこでございます。
お尋ねのございました企業につきましては、この要件を満たしておりましたことから、協力業者として認めたものでございます。
<筑紫野市の「産興」処分場について>
高瀬菜穂子 議員
次に、筑紫野市の産興最終処分場について伺います。1999年に3人の死亡事故を起こした産興処分場には、許可区域を超えて埋め立てられた廃棄物が約30万㎥もありました。県は、産興に対し、改善命令を発出し、その撤去を求め、履行されないため催告書を毎年発行してきました。ところが、2020年には、催告書は発行されていません。2005年に業の許可取り消しが行われた際、当時の課長は「業は取り消されたが、改善命令は失効されない」と明言されました。その後2019年まで毎年発行された催告書がなぜ昨年は発行されなかったのでしょうか。
環境省は、2018年3月に「行政処分の指針について」という通知を出し、「許可の取り消しに伴う措置」として、「当該許可を取り消された者、またはその承継人は、・・・最終処分場の廃止の確認を受けるまでの間、・・・改善命令、報告徴収及び立ち入り検査の対象となる」とあります。さらに、「改善命令発出後は・・・改善命令が履行期限までに履行されないにも関わらず、告発を行わないばかりか、催告もせずに漫然と放置するようなことは決して許されるものではないこと」と厳しく指摘をしています。
県は、改善命令を期限までに履行させることができず、催告書を毎年、漫然と出し続け、昨年からその催告書さえ発行していないという状況ではありませんか。環境省の指針の立場で、改善命令の完全履行まで指導を行うべきと考えます。そこで、知事にお尋ねします。昨年から催告書が発出されていないのはなぜですか。環境省通知に照らして、県の対応は「催告もせず漫然と放置」している、「決して許されるものではない」ものと考えますが、知事の見解を伺います。以上ご答弁よろしくお願いします。
服部誠太郎 知事
催告書が発出されていない理由と県の対応について
次に筑紫野市の「産興」への催告書が発出されていない理由と県の対応についてお尋ねがございました。
当該事業所に対しましては、処分場の許可区域内での容量超過と許可区域外での埋め立てが認められましたため、平成15年、県は、これらの廃棄物を撤去するよう改善命令を発出いたしました。平成17年には、他の違法行為を確認いたしましたことから、廃棄物処理法に基づく全ての許可の取り消し行っております。
この改善命令によりまして、許可区域内の容量超過分の廃棄物は撤去されましたが、平成17年の許可取消時点で許可区域外の廃棄物が残っておりましたため、その撤去を文書にて継続的に指導いたしますとともに、処分場に対して、週1回以上の立入検査により重点的に監視を行い、必要な指導を行ってまいりました。
また、当該処分場につきましては、公害等調整委員会による水質汚濁被害の原因裁定におきまして、平成24年に、水道水又は現水の水質悪化に伴う健康被害又は生活環境被害は認められないと結論づけられましたことに加えまして、それ以降の浸透水等の環境モニタリングの結果におきましても、基準値を下回った状態が続いておるところでございます。
さらに県では、一昨年度、覆土状況及び植生の調査を実施をいたしまして、覆土により廃棄物の飛散流出防止及び雨水の排除機能は保持されていること、及び処分場全体が多様な生物の生息の場として機能をしているということを確認をいたしております。
昨年6月、この調査結果をもとに、専門家会議におきまして、「現状において生活環境保全上の支障はなく、今後も処分場の安定化が見込まれ、新たな対策を講ずる必要性はないと考えられる」との評価をいただいております。
こういったことから、改善命令の催告の必要性はないと判断し、昨年度から催告書を発出していないものでございます。
なお、処分場内には処理を受託したまま残されております廃塗料や石膏ボードなどがございまして、これらについて早期処理完了のために粘り強く指導してまいりました結果、昨年度から搬出量が大幅に増加をいたしております。
県といたしましては、引き続きこれらの廃棄物の適正処理を指導してまいりますとともに、環境モニタリングを継続し、住民のみなさまの安全・安心を確保してまいります。
〈第二質問〉
高瀬菜穂子 議員
教育委員選任について再質問いたします。知事も教育長も問題はなかったとのご答弁ですが、県民からは、この人事は教育の中立性・独立性からみて問題があると批判の声が上がり、塩川氏は辞退したということではありませんか。塩川氏の議員辞職は5月14日、知事が選任人事を提案されたのは28日、わずか2週間しかありません。そこで、教育長に伺います。報道にあるように本人から申し出があったのか、それはいつなのか、選任決定はいつか、選任に至った経緯を具体的に明らかにしてください。知事に伺います。教育長から推薦を受けたのはいつで、正式に塩川氏に要請したのはいつですか。結果として、塩川氏が辞退し、教育委員職に穴があく事態になったことについてはどのような見解をお持ちですか。お答えください。
服部誠太郎 知事
ご答弁を申し上げます。先ほどお答え申し上げましたとおり、私が吉田教育長から推薦を受けましたのは、塩川氏が議員を辞職した後でございます。その後、塩川氏に正式に要請するよう教育長に指示をいたしました。塩川氏につきましては、そのご経験とこれまでの活動から子どもたちの教育にとって、教育行政の活性化にとって大きなご貢献をいただけるものと考え教育委員候補者として選定していましたことから辞退については、大変残念なことと受け止めております。塩川氏の辞退により、新たな教育委員の任命についての提案を見送らざる事態になりましたことをお詫び申し上げます。
吉田法稔 教育長
教育委員候補の選定に係る経緯についてでございます。先ほどの答弁にもございましたとおり、塩川氏の議員辞職後に法律にある兼職禁止に抵触しなくなったことも踏まえ教育委員候補にふさわしい方として塩川氏を知事に推薦したところでございます。その他の具体的な選定に係る経緯につきましては、人事に関わることでございますので、お答えは控えさしていただきます。
高瀬菜穂子 議員
お答えいただきましたが、教育の中立性について問題があったとの認識は見えません。客観的にみて、塩川氏は教育委員になるために議員辞職を行ったのではないかというふうに見えます。それは、教育の中立性だけでなく、議会との緊張関係についても疑念を疑わせるものです。本当にこの間の経緯について、問題はなかったとお考えですか。知事と教育長に再度伺います。
服部誠太郎 知事
先ほど来、お答え申し上げておりますとおり地教行法の規定に基づきまして、この判断をいたし、今回の選定に係る手続きを行ったところでございまして、その点において何ら法に抵触する点はないというふうに考えております。
吉田法稔 教育長
先ほどもご答弁させていただきました法律の規定制度に則りまして、私は塩川氏を教育委員候補にふさわしいとして推薦さしていただきました。その過程に問題があったというふうには考えてはおりません。
高瀬菜穂子 議員
変わらないお答えでした。しかし今のお答えでは、県民への説明責任を果たしたとは言えないというふうに思います。任期の途中で、1人区で、一身上の都合で、お辞めになった。そしてその2週間後に教育委員になる、これは異常ではありませんか。今回の人事については真摯に反省し、このようなことが今後繰り返されないよう厳しく強く求め、時間がありませんので、質問を終わります。