● 15年11月02日 県議会報告

2015年11月2日 2015年決算特別委員会 高瀬菜穂子委員質疑・答弁 (大要)「小中一貫校と学校統廃合について」



≪2015年決算特別委員会≫

2015年11月2日

 

高瀬菜穂子委員

 日本共産党の高瀬菜穂子でございます。
 本日は、小中一貫校とこれに伴う学校統廃合について質問いたします。
 先般、学校教育法が改正され、現行の小中学校に加え、小学校から中学校までの義務教育を一貫して行う義務教育学校が、新たな学校種として来年度から制度化されることとなりました。しかし、法制化以前から一貫校は既に動き出しておりまして、その問題点も指摘されてきております。小中一貫校には連携型や施設一体型、学年の区切りも「六・三」「四・三・二」「四・五」などばらばらで進められておりまして、これほど統一性を欠いたまま推進していいのかと私などは危惧してきたところですが、きょうは施設一体型小中一貫校に限ってお尋ねしたいと思います。
 県内の実態、今後の計画、県としての設置の方針があればお答えください。

 

相原教育庁義務教育課長

 県内には、宗像市に二校、飯塚市、田川市、八女市、東峰村、赤村にそれぞれ一校、計七校ございます。なお、今後の計画については県教育委員会としては把握しておりません。また現在、県教育委員会として、小中一貫教育の実施についての統一的な方針を作成する予定はございません。

 

高瀬菜穂子委員

 現在七校で、県としての設置方針はなく、市町村の判断であるということだと思います。学校の設置については市町村の判断だと思いますが、教育全般については県がしっかり責任を持っていただきたいと思いますので、そのことは指摘しておきます。
 では、施設一体型の小中一貫校の教育的効果、メリット・デメリットについて県の認識をお答えください。

 

相原教育庁義務教育課長

 文部科学省の実態調査によりますと、県内の施設一体型小中一貫教育校におきましては、その全校で、いわゆる中一ギャップの緩和、中学校への進学に不安を覚える児童の減少及び教員の指導方法の改善意欲の高まりを成果として挙げている一方で、七割以上の学校で、小中学校の教職員間での打ち合わせ時間の確保や、合同の研修時間の確保に課題があるとされております。

 

高瀬菜穂子委員

 私も幾つかの小中一貫校をお訪ねしまして直接伺いましたが、教職員間の打ち合わせ時間の確保が難しく、多忙になるということは一つの特徴であると思いました。中学校の先生が小学校の専科教員として授業を行う、また小学校の先生がティームティーチングなどで中学校に行くなどの乗り入れの場合、時間割をつくること自体が煩雑で難しく、誰がどのクラスに行き、どの教室を使うかなどの連絡が、各学年一クラスの小規模校であっても大変だということでした。大規模校になればなおさら、先生方が走り回っている状況だと聞いています。
 中一ギャップの解消は、小中一貫校の目玉のように言われています。確かに六年一組の隣に七年一組があり、一つの学校ですからそれまでと変わらず、その意味ではギャップはなくなっています。しかし、中学生に上がるというその不安とともに緊張感もなくなってしまうことや、六年生が最高学年としてさまざまな活動で中心となって達成感を味わう、その大事な育ちの時期が奪われているとの研究結果もあります。
 全区を小中一貫とした東京・品川区では、七年生でいじめ自殺事件が続けて起こり、報告書が出されていますが、単に小中をくっつければさまざまな教育問題が解決するわけではない、新たな問題も生まれるということを示しています。さらには、幾つもの学校が統廃合して大規模校になった場合には、バス通学に伴う問題や、運動場を一斉に使うことができない、そのため部活をやる日と小学生が遊ぶ日を交互にしているとか、体育大会の全学年参加の玉送りで、一年生から九年生まで並ぶのに一時間もかかったなど、教育的にどうかという問題も起こっています。
 小中一貫校は教育的効果を十分に検証されることなく導入され、義務教育学校として法制化されるということになります。さまざまな角度からの検証と、情報の共有と対応が必要だと考えます。県教委の見解をお答えください。

 

相原教育庁義務教育課長

 文部科学省の調査結果などをもとに、小中一貫教育校の実態をさらに調査していくことがまず必要であると考えております。また、小中一貫教育に関連する県の重点課題研究も幾つかございますので、それらをもとに成果と課題などを検証し、市町村教育委員会に対してその情報提供を行ってまいりたいと考えております。

 

高瀬菜穂子委員

 ぜひ取り組んでいただきたいと思います。
 小中一貫校が大規模な統廃合を伴う場合、まちづくりにも大きな影響があります。今、香春町で四つの小学校と二つの中学校を一つの学校に、小中一貫校を視野に統廃合する計画が進んでおり、住民からは不安の声も上がっております。直接、町の教育長からお話を伺いましたが、この計画は行政改革大綱の提起で始まったとのことでした。
 学校六校が一校になれば、確かに先生の数、学校の維持経費は削減できるかもしれません。しかし、学校のあり方、規模の適正化は、あくまでも児童生徒の教育的観点から検討されるべきだと考えます。あわせて、学校はコミュニティーの核であり、防災、地域の交流の場としての機能を持っていることから、まちづくりの観点からの慎重な検討が必要だと考えますが、県の見解をお答えください。

 

日高教育庁企画調整課長

 小中学校の統合の検討は、設置者であります市町村が主体的に行うべきものでございますけども、その検討に当たっては、単に行政改革の視点からというだけではなく、教育の機会均等や教育水準の維持・向上の観点を踏まえて、学校の規模の適正化や地理的条件など、それぞれの学校や地域が置かれているさまざまな状況を勘案して行われるものであると考えております。

 

高瀬菜穂子委員

 少子化の中で学校規模が小さくなり、小規模校解消のための統廃合が課題となって、文科省も本年一月に、学校の適正規模を示す新たな手引を作成しました。この手引には、小規模校を存続する場合の教育の充実についても詳しく言及があります。
 県教委はこれまで、小規模僻地校における教育について研究を長年進めてきております。小規模僻地校での教育についてはどのような認識を持っておられるでしょうか。

 

相原教育庁義務教育課長

 僻地小規模校におきましては、児童生徒の学習状況を的確に把握でき、きめ細かな指導が行いやすい、意見や感想を発表できる機会が多くなるといった特性がございます。また、豊かな自然条件や地域の伝統芸能などの教育資源を生かして、地域への誇りと愛着の心を育む環境にも恵まれていると考えております。一方、児童生徒の人間関係が固定化しやすい、児童生徒同士が切磋琢磨しづらい、球技や合唱、部活動等の集団的な活動に制約が生じるなどの課題もあると認識しております。

 

高瀬菜穂子委員

 私は中学教師時代に、複式の小学校からの生徒を受け入れた経験がありますが、大変豊かな教育と地域の活動の中で育っていました。中学校に、全校児童が十人以下だったと思いますが複式から来た生徒が、先生、中学校の理科の実験道具、班に一つしかないんやね。小学校のときは何でも一人に一つやった。顕微鏡で畑や川に行ってあらゆるものを見たよ。それを新聞にして楽しかったと話してくれたのを、今も印象深く覚えております。本当に豊かな自然の中でよく遊び、よく学んだ、この小学校時代というのが、これらの生徒にとって本当に大切な宝物のような基礎になっています。この生徒は考古学の道に進み、東大の大学院から、今はギリシャで研究者として活動しています。
 福岡県には僻地小規模教育の豊かな蓄積がありますので、その成果をぜひ広げてほしいと思います。もちろんデメリット、小さければできないことはありますが、それを補うような活動というのは、今のICTを使うなどすれば、工夫のできる部分もたくさんあるかと思います。
 学校規模の適正化、統廃合などの判断は、設置者である市町村が判断すべきですが、県としても基準やガイドライン、手引などの策定、フォーラムなどの場の設定など、情報提供機能の強化、特に小規模校を残すという判断を市町村が行った場合の支援などについて、手引には詳しく書かれています。県として現在どのような取り組みを行っているのか、また、今後どのように取り組んでいかれるのかお示しください。

 

日高教育庁企画調整課長

 県教育委員会におきましては、市町村が主体的に統合の要否を検討できるように、統合を行った取り組み事例の紹介や、統合の際に活用できる支援制度の情報提供を行うとともに、あわせまして僻地や小規模校における教育の充実に関する情報提供や学校経営等への指導、助言などを行っております。また、複数学校間での事務の共同実施や特色あるカリキュラムの編成についての助言など、文部科学省の手引に示されております取り組みも行っているところでございます。今後とも市町村における主体的な検討に資するように、引き続き適切な指導、助言あるいは情報提供に努めたいと考えております。

 

高瀬菜穂子委員

 ぜひ進めていただきたいと思います。
 統廃合の是非が問われた裁判、ちょっと前ですが、一九七六年六月の名古屋高裁判決は、統廃合で徒歩通学の機会が失われることにより、人格形成上、教育のよき諸条件を失うと、徒歩通学が子供の人格形成に果たす役割、地域の人々や自然との触れ合いの重要性を示して、廃校処分の取り消しを認めたということがありました。徒歩通学が子供の人格形成に果たす役割が大きいという、この観点は今につながる重要なものと考えます。また、まち・ひと・しごと創生法に基づく総合戦略においても、学校のまちづくりに果たす役割は極めて大きいと考えるものです。
 最後に教育長に伺います。全国的に小中一貫校が大規模な学校統廃合を伴って進められていることを危惧しております。小中一貫校は、法制化の前にさまざまな形で実施されており、その教育効果や課題については研究、検証が必要です。一方、少子化の中で小規模校をどうするかという問題も各地で起こっております。県としてガイドラインをつくるなどの取り組みを進めていただくとともに、小規模校を残す判断を市町村がされた場合、教職員の加配や教育研究の共同化など、文科省の手引を実践する形で進めていただきたいと思います。教育長の決意を伺います。

 

城戸教育長

 学校の統廃合でございますけれども、学校は地域コミュニティーの核という性格も持っております。したがいまして、小規模化した小中学校の統合を行うか、あるいは小規模校として存続させるか等につきましては、設置者である市町村が、地域の実情あるいは地域住民の方々の意向を十分に踏まえて判断することが大切であろうと思っております。
 県の教育委員会といたしましては、今回の国の手引の中に、統廃合を行うかどうかを判断する際の考え方、あるいは留意点、さらには小規模校の学校を残す場合の配慮事項等につきまして詳しい記載がなされておりますので、この手引を活用しながら、市町村の求めに応じて、少子化時代に対応した学校づくりについて指導、助言を行ってまいりたいと考えております。

 

高瀬菜穂子委員

 よろしくお願いしたいと思います。
 島根県の邑南町というところが、人口一万二千人の小さな町ですが、子育て日本一を掲げ、保育所九カ所、小学校八校、中学校三校を全て残すと町長が宣言しているそうです。そして、さまざまな行き届いた支援を続けています。こうした中で、若い世代が移住してきているとも聞いております。このような選択もできるわけで、そうした場合に県教委の支援をしっかり行っていただくよう再度強調いたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

<< >>

  • サイト内検索

    【検索はコチラ】
  • 痴漢アンケートバナー

  • 県議会ニュース

  • 赤嶺政賢

  • 田村 貴昭

  • 仁比そうへい

  • 真島省三

  • リンク集

  • お問い合せ